東証マザーズ指数の上昇が顕著だ。22日は小幅に下げたが、それ以前は連日で年初来高値を更新し約1年ぶりの高値水準となった。新型コロナウイルスの影響で世界景気の先行き不透明感が強く、企業業績に対する懸念が漂うなか、マザーズ市場には比較的影響が少ないとみられる銘柄が多いため、個人投資家を中心とした短期資金が流入しているのだろう。関西圏も緊急事態宣言が解除され、経済活動の再開は着々と進んでいるが、コロナ前の経済に戻るにはしばらく時間がかかるため、マザーズ銘柄選好の流れは続くのではなかろうか。
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※東証マザーズ指数の推移
■アンジェスがマザーズ市場の相場をけん引
22日の東京市場では、日経平均株価の下落して引けるなど戻り待ち売り圧力の強さが意識された。マザーズ指数も下げたが下落率は0.11%にとどまり日経平均の0.80%を下回った。マザーズ市場の相場をけん引しているのはバイオ株で、その象徴的な存在がアンジェス(4563)だろう。同日の株価は続伸して引けた。
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※アンジェスの株価
アンジェスはこれまで、赤字を垂れ流しながらも増資を繰り返すため「株券印刷業」などと揶揄されてきたが、新型コロナウイルスワクチンの開発プロジェクト発足で流れが変わったようだ。日増しに期待感が高まっており、21日にはAGC(5201)が開発プロジェクトに参加すると表明したことで株価は商いを伴って上昇し、時価総額は2000億円程度にまで増加。マザーズ指数への指数寄与度も高まっている。
■新型コロナワクチン開発プロジェクト
新型コロナワクチンプロジェクトの中心は大阪大学とアンジェスで、プラスミドDNA製品の開発実績を生かし、コロナウイルスの予防用DNAワクチンを開発し、製造はプラスミドDNAの製造技術と製造設備を有するタカラバイオ(4974)が担当する。また、ダイセル(4202)が新規投与デバイスによる皮内への遺伝子導入法を開発し、その臨床応用を目指した研究を大阪大学が推進。EPSホールディングス(4282)が、人への投与を行う臨床試験について運営と管理を行い、臨床開発を促進するため医薬品開発支援機関を担う。新日本科学(2395)は、非臨床試験におけるDNAワクチンの安全性の検証業務を中心に担当し、ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ(6090)がワクチンの有効性等の評価指標となるバイオマーカーの探索を担当。AGCはワクチン原料の製造を請け負い、供給体制の確立に協力する。今後も同プロジェクトに参画する企業が増える公算が大きいとみられ注目されよう。
■時価総額首位のメルカリは
マザーズ市場には、ネット関連企業が多い。テレワークに順応しやすく、新型コロナの影響は比較的軽微とみられる。むしろ、ネット通販、オンライン診療、オンライン教育などでは追い風になるとみられる銘柄が多い。マザーズ市場で時価総額首位のメルカリ(4385)は年初来で約5割上昇し、一時は心理的な節目の3000円台を奪回した。米国事業の苦戦で赤字拡大となっているが、主力の日本事業は好調で存在感が強まっている。マスク転売が社会問題となったが、メルカリの存在感の大きさを裏付ける事象だったと言えそうだ。
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※メルカリの株価
■投資主体で見るマザーズ市場の動き
マザーズ市場の売買動向にも着目したい。マザーズ市場全体の売買代金に占める個人投資家(現物+信用)のシェアは7割程度、海外投資家は2割程度という構図がしばらく続いてきたが、海外投資家の存在が日増しに高まっており、ここ数年で徐々にその差は縮小。20年2月にはついに海外投資家が個人投資家を上回る事態となった。そのため、マザーズ市場が相場全体の動きに連動しやすくなっていたところに、コロナショックが発生したことで海外投資家の売りが膨らみ3月中旬に急落したようだ。
これをチャンスとみた個人投資家は3月3週から8週連続で買い越し、売買代金比率は再び海外投資家を上回り、個人主体の市場に戻りつつある。その背景には、個人投資家の市場に参加する時間が増加したことがあるとみられる。勤務時間中にトイレに隠れて株取引を行う個人投資家を「トイレーダー」と呼ぶが、緊急事態宣言でテレワーク勤務となった個人投資家は、仕事片手に自宅で堂々と売買する「テレワークトレーダー」になっていると推察される。全国的な緊急事態宣言の解除により、再び「トイレーダー」を余儀なくされる投資家が多そうだが、テレワークの定着で「テレワークトレーダー」を続ける投資家も少なくないかもしれない。
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