QUICK資産運用研究所=望月瑞希
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)で金融市場は混乱を極めた。未曾有の危機に直面した運用のプロ達は、この危機で何を考え、どう乗り越えていくのか。アジア株への投資が専門のJPモルガン・アセット・マネジメントの深水悟朗ポートフォリオ・マネジャーに話を聞いた。
■悪いタイミングで起きたショック
――コロナショックで感じたことを教えてください
「タイミングが非常に悪かったと思います。今回のショックではヒト・モノ・カネのうち、ヒトとモノの2つが止まりました。もともと米中貿易摩擦でグローバルなサプライチェーン(供給網)が寸断し、モノの流れが滞っていましたが、それでも米国内総生産(GDP)の約7割を占めるといわれる小売りや娯楽・旅行を含めたサービス産業が主に先進国の景気を支えていました。ところが今回の新型コロナでヒトの流れも完全に止まり、このサービス産業も大打撃を受けました。アジアでも多くの国で今年の経済成長率が大幅に落ち込むのは確実です」
「一方、今回は金融当局のレスポンスの速さが印象的でした。リーマン・ショックの教訓を生かし、各国の中央銀行がカネの流れだけは止めないように素早く対応したのだと思います。日本政府でも短期間で国民に一律10万円を支給する措置を決めるなど、前代未聞の危機対応にも驚きました」
■オンライン化で投資情報得やすく
――外出制限で運用業務に支障は出ましたか。
「ほとんど支障はありませんでした。業務内容もプロセスも全く変わりません。海外にいる同僚やアナリストと普段から頻繁にオンラインで打ち合わせしていたので、非対面の会議にも違和感はないです。オフィスの椅子に座っているか、家の椅子に座っているかの違いだけです」
「むしろ改善点がありました。以前にも増して海外の投資情報を豊富に入手しやすくなったことです。今までは旅費を払い時間をかけて現地に向かい、企業を訪問するなどして情報を自ら集めることもしていましたが、今回のコロナで世界中が外出自粛傾向になり、投資情報に関連するオンラインによるIR(投資家向け広報)やセミナーの開催が一気に増えました。アジア各地に行かなくても、日本に居ながらにしてより詳細な情報を得られるようになったのです。今後は投資家が等しく情報を得る機会が増え、投資情報のフラット化、ひいてはアジア市場の効率化にもつながると思います」
■アクティブ型ファンドに追い風
――コロナ後の世界はどうなっていくと考えていますか。
「あらゆる物事のオンライン化が加速するため、世界中のネット関連企業に注目が集まると思います。新規参入も投資資金も爆発的に増えるでしょう。ネット関連では中国の技術革新が世界の1歩先を行っています。しばらくは中国優位が続くのではないでしょうか」
――米中対立が激しくなり、反グローバリズムが加速するという意見があります。
「政治上はそうかもしれませんが、経済活動における対立はそこまで激しくならないと思います。内向き志向でメリットを受ける国は世界にほとんどありません。各国とも強いインセンティブはないはずなので、経済的なグローバリゼーションは続くだろうと楽観的な見方をしています」
――今後の運用で注目している点を教えてください。
「しばらくは業種間の格差が鮮明になってくると思います。なぜなら、マクロ経済の回復に時間がかかるからです。オールドエコノミーといわれる銀行やエネルギー、素材などの業種はマクロ経済に連動しやすく、業績回復が遅いでしょう。一方、新しい需要を開拓していくテクノロジーやエンターテイメント、インターネット、通信などの躍進を見込んでいます。つまり(運用担当者が銘柄を選別する)アクティブ型ファンドにとって追い風になると考えています」
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※「JPMアジア株・アクティブ・オープン」(1731798B)
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