ガラス大手のAGC(5201)が9月17日にオンラインで開催したライフサイエンス事業の説明会では「CDMO(医薬品製造・開発受託)」「実績」「モルメッド(MolMed、2020年7月に買収したイタリアのCDMO企業)」などに話題が集中していた。説明会の内容をテキストマイニングし、分析した。
説明会の冒頭、小室則之ライフサイエンス事業本部長は、事業の位置づけについて説明した。ライフサイエンス事業は、グループ全体の売上高である約1兆5000億円(2019年12月期)のおよそ3分の1を占める化学品カンパニーに属し、主に低分子の合成医農薬やバイオ薬品のCDMOを手掛けている。19年12月期の売上高は617億円と売上規模は小さいものの、事業本部が立ち上がった17年12月期からの年率平均成長率は30%と急成長が続く。
小室本部長は世界的にCDMOによる開発・製造受託が伸びている背景として、製薬会社が研究開発に注力するため「錠剤にしたりデリバリーなどでかなりアウトソースが進んでいる」と指摘した。AGCは「日米欧の3極で、合成とバイオの医薬品のサービスを提供している」のが強みの一つだと分析した。
CDMOを手掛ける会社は世界に数百社あるものの、大部分が高い技術力や品質保証を求められない開発向けで、高品質を求められる「商用のCDMOは世界で数えても10社ないくらい」と強調した。AGCはシングルユースバッグと呼ばれる多品種少量生産に適した製法で「世界トップクラスの規模を持っている」のも強みだ。
7月に買収したモルメッド社は遺伝子や遺伝子由来の細胞による治療で高い技術をもち、今回の買収で「バイオの世界でのCDMOビジネスが成立する」(小室本部長)という。今後は参入した部門の強化に焦点が移る。
アナリストの質問では他社との競争環境に強い関心が集まった。同じくCDMOを手掛ける富士フイルムホールディングス(4901)について問われ、小室本部長は「シングルユースのキャパシティでは、AGCに次ぐ規模をもっており、非常に手強い競争相手であると認識はしている」と話していた。(QUICK Market Eyes 阿部 哲太郎)