アラベスクグループのESG評価サービス「ESGブック(旧アラベスクS-Ray)」は7月21日、3万5000を超すETF(上場投資信託)などファンドのスコアリング機能を追加した。現時点では日本のETFなどのファンドは対象となっていない。しかし、海外のETFなどは証券会社やロボアドバイザーを通じて日本の投資家にも馴染みのある商品も多く、金融機関や個人投資家にとって本ファンド・スコアが参考になるとみられる。
本ファンド・スコアはテクノロジー対応のESGデータ・ソリューションに対する顧客の需要の高まりに応じて開発された。ESGブックのサービスを世界規模で展開する一環である。ESGブックのユーザーは3万5000を超すファンドのサステナビリティの状況を分析および比較することができるようになった。
3万5000を超すファンドや株価指数について投資先企業や構成銘柄を分析した結果、いくつかのファインディングがあった。気候変動に焦点を当てて要約すると以下の3点が挙げられる。
(1)排出原単位(活動量当たりの排出量)のさらなる削減がなければ、2050年までに世界の主要な株価指数のいずれも気温上昇が1.5度を下回らない。
(2)ESGブックの分析対象のファンド全体の運用資産額は40兆ドルに相当するが、平均してその2割は排出量を開示していない。
(3)主要な株価指数のうち、ASX200(オーストラリア)の排出原単位が最も高く、最も低いのはダウ工業株30種平均(米国)で、その排出原単位の差は非常に大きい。
(画像1)ESGブックのファンド・スコアのダッシュボードイメージ①
(画像2)ESGブックのファンド・スコアのダッシュボードイメージ②
ESGブックの主要株価指数の分析によると、ダウ平均の排出原単位は売上高100万ドル当たり40トンの二酸化炭素の排出量であった。これは主要株価指数の中で最も低い値である。排出原単位の低い業種である金融、小売業、テクノロジーサービスの割合が高いからだ。また、ナスダック100株価指数の排出単位は2番目に低く、売上高100万ドル当たり74トンの二酸化炭素の排出量であった。
一方、排出原単位の最も高かったASX200は公共事業とエネルギー鉱物の2業種の割合が高く、売上高100万ドル当たり327トンの二酸化炭素の排出量であった。ダウ平均の8倍、ナスダック100株価指数の4倍以上の値である。
ASX200に占める公共事業部門の組み入れ比率は約5%であるが、排出原単位の約19%を占めている。さらに、エネルギー鉱物部門の組入比率は約9%であるが、排出原単位では約35%を占めている。このように、組入比率では15%以下の2業種が排出源単位では5割を占めている。
世界の主要株価指数はETFやインデックス・ファンドを通じて機関投資家や個人投資家の投資対象として重要な役割を担っている。今後、これらの主要株価指数でも指数採用企業の二酸化炭素排出量や排出原単位を考慮することが求められるのではないか。