【日経QUICKニュース(NQN)】財務省と金融庁、日銀は30日に国際金融資本市場に関する情報交換会合(3者会合)を開いた。3者会合の開催は米シリコンバレーバンク(SVB)の破綻などで世界的な金融システム不安が高まっていた今年3月以来となる。神田真人財務官は会合後、円相場について「過度な変動は好ましくない」と語り、必要に応じて為替介入に踏み切る姿勢を示した。
日本政府・日銀が約24年ぶりに円買い・ドル売り介入を実施した2022年を振り返ると、3者会合は3度開かれていた。うち2月はウクライナを侵攻したロシアの銀行を資金決済網「国際銀行間通信協会(SWIFT)」から排除した影響が焦点で、6月と9月は歴史的な円安が主な議題になったとみられる。
神田財務官は3月のアンディ・ボーコル米財務次官との会談から外為市場に言及する機会が多くなり、円安をけん制する「口先介入」を増やしていった。6月の3者会合では共同声明をとりまとめ、円安進行を「憂慮している」と総括。9月には為替介入に関し「準備がある」や「スタンバイの状態と考えてもらっていい」などと語っていた。昨年以降の主な発言を一覧にした。
【神田財務官の主な発言】
■22年3月29日 米財務次官との会談後
「為替の問題に関し、日米の通貨当局間で緊密な意思疎通を図っていくことを確認した」
「為替の安定は重要であり、急速な変動は望ましくない」
「最近の円安の進行を含めて、為替市場の動向や日本経済への影響をしっかりと緊張感を持って注視していく」
■22年6月10日 3者会合で共同声明発表後
「最近の(為替市場の)過度な変動を憂慮しており、その認識をしっかり確認した」
「あらゆるオプションを念頭に置き、機動的に対応する」
■22年9月8日 3者会合後
「急速な円安が経済、物価に与える影響を高い緊張感を持って注視していく必要があることを確認した」
「とりわけこの数日間では投機的な動きも背景に、一方向で急速な円安の進行がみられる。これは明らかに過度な変動だ」
「(円相場は)ファンダメンタルズ(基礎的条件)だけでは正当化できない急激な動きだ。極めて憂慮している」
「こうした動きが継続すればあらゆる措置を排除せず、為替市場において必要な対応を取る準備がある」
■22年9月14日 財務省内で記者団に
「激しい動きは望ましくない」
「あらゆるオプションを排除せず、必要な対応を取る」
■22年9月14日 財務省内で=共同通信報道
「状況に応じて適切な対応を取る準備ができている」
■22年9月22日 財務省内で記者団に
「(円買い介入について)正直申し上げてまだやっていない。ステルス(覆面)でやる場合もある。いつでもやる用意はある」
「(円相場について)米連邦公開市場委員会(FOMC)を挟んで大きな乱高下をしている」
「過度な変動、無秩序な動きは家計、企業に非常に悪影響を及ぼすもので、容認できない」
「過度な変動の場合には、あらゆる手段を排除せず適切な対応をする用意ができている。スタンバイの状態と考えてもらっていい」
■22年9月22日 24年ぶり円買い介入実施後
「政府としてこうした過度な変動を憂慮しており、先ほど断固たる措置を取った」
「足元の為替市場では投機的な動きも背景に急速で一方的な動きがみられている」
「引き続き為替市場の動向を高い緊張感を持って注視しつつ、対応には万全を期したい」
■22年10月11日 20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議出発時=TBS報道
「米ワシントンへの機内でも介入の決定を下せる」
■22年10月17日 財務省内で記者団に
「過度な変動に対しては、しっかりと対応していくことになる」
「(G20会議などで)多くの国の通貨が(最近の)ボラティリティー(変動率)の高まりをもって、大きく変動しているとの認識が初めて共有された。国際合意のもとで各国が適切に対応していく」
■22年10月24日 財務省内で記者団に
「介入の有無については一切コメントしない」
「24時間365日で過度な変動に対しては適切な対応を取ると申し上げている。それをこれからもずっと続けていくことになる」
「投機筋によって為替が大きく変動している。過度な変動が国民の生活やひいては世界経済に悪影響を及ぼすことは容認できない」
「これまでどおり、過度な変動あるいは無秩序な動きに対しては適切な対応を取ることは変わりない」
■22年11月11日 財務省内で記者団に
「緊張感をもって注視し、必要な場合には適切な対応をとっていきたい」
「(米財務省の外国為替報告書について)従来と同じ表現が書かれているとともに、日本の為替政策は透明性が高いという評価が書き込まれていると考えている」
■23年5月30日 3者会合後
「(円相場は)ファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが重要だ。過度な変動は好ましくない」
「為替市場の動向をしっかりと注視し、必要とあれば適切に対応する考えに変わりはない」
「必要とあればあらゆるオプションを否定しないが、今どういう状況かはコメントを差し控える」
「我々は特定の相場のレベルに着目しているわけではなく、変動幅とかが重要だと考えている」
「日々の為替市場の動きについて、ことごとくコメントすることは差し控えたい」