【NQNロンドン=菊池亜矢】特殊化学の英クローダ・インターナショナルの株価が3年ぶりの安値圏にある。ロンドン株式市場で9日に50.52ポンドと、2020年6月以来3年ぶりの安値を付けた。20日終値は53ポンド台と22年末を2割近く下回る。9日発表した23年12月期通期の利益見通しが市場予想を大幅に下回り、業績悪化を懸念した売りが出ている。
クローダは化粧品原料や製薬・農薬向けの添加剤、工業用の特殊化学品を製造・販売する。9日に23年12月期通期の税引き前利益が3億7000万~4億ポンドになりそうだと発表した。QUICK・ファクトセットによると、この報告発表前である5月末時点の市場予想は4億6900万ポンド程度。市場予想を大幅に下回る利益見通しを受け、株価は9日に急落した後も戻りが鈍い状況が続いている。
同社の22年12月期通期の売上高は前の期比11%増の20億8930万ポンド、調整後営業利益は10%増の5億1510万ポンドだった。化粧品やホームケア向けの原料を扱うコンシューマーケア部門では販売量の減少を価格引き上げが補った。製薬や農薬向け添加剤のライフサイエンス部門は堅調な農薬需要がけん引し、両中核部門で売り上げが好調だった。23年12月期通期の見通しも「期待に沿っている」としていただけに、9日の発表を受け市場には失望が広がった。
9日の発表によると、コンシューマーケア部門で顧客の在庫削減が続き、1~5月の売上高は前年同期からほぼ横ばいにとどまったという。今年の滑り出しが順調だったライフサイエンス部門でも、顧客の急速な在庫削減に直面していると報告した。顧客の在庫削減は23年7~12月期も継続し、農薬分野の勢いも鈍化すると先行きに慎重な姿勢を示す。
独ベレンベルク銀行は「クローダはコンシューマーケア部門で22年に22%の大幅な値上げをしており、一部の顧客が大幅値上げに対し、数量を落とすことで対応したのではないか」とみる。売上高への影響が懸念されるなか、同社株が持ち直すきっかけが見込みにくくなっている。