東京株式市場で仮想通貨関連銘柄の売買が細っている。代表的な仮想通貨であるビットコインの値上がりが続くが、個人投資家が関連銘柄への物色を進める動きはみられない。仮想通貨は値動きの荒い対象の域を出ず、決済手段としての利用拡大を描く投資家は少ないからだ。仮想通貨の上昇で投機的な取引を好む投資家はビットコインそのものを取引し、関連銘柄の注目度の低下を促している。
ビットコインのドル建て価格は29日、初めて1ビットコイン=1万ドルの大台に乗せた。調整らしい調整を経ず、この1カ月で約60%も上昇した。
半面、株式市場では関連株の売買が膨らむ気配はない。子会社が仮想通貨取引所を運営し関連銘柄の代表格であるリミックスポイント(3825、2部)株の1日平均の売買高は11月が約16億円と、仮想通貨関連が注目を集めた5~6月(約111億円)の1割強にとどまる。
株価も軟調だ。リミックス株は30日に約5カ月ぶりの安値を付けた。仮想通貨の口座開設が増えていることを追い風に、13日に2018年3月期の連結最終損益見通しを5億2800万円の黒字(前期は4200万円の赤字)と、従来予想の4億300万円の黒字から引き上げた。それにも関わらず材料視する向きは乏しい。インフォテリア(3853、マザーズ)なども弱含んでいる。
ネット証券大手の楽天証券では、任天堂(7974)など東証1部の業績成長の期待が高い銘柄に、短期売買の個人が集中している。土信田雅之シニアマーケットアナリストは「仮想通貨関連が売買代金の上位に顔を出すことはなくなった」と話す。
米CMEグループなどはビットコインに関連する先物商品の上場を計画している。だが機関投資家の間では「決済手段として普及しなければ裾野は拡大せず、仮想通貨関連の事業の収益寄与は織り込めない」(いちよしアセットマネジメントの秋野充成執行役員)との声が多い。
松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストは「投機的な売買を好む個人がビットコイン自体を取引対象にしていることも、株式市場で関連株の売買が盛り上がらない理由だ」とみる。
仮想通貨の口座開設の目的が純粋な投資に限られるのなら、ビットコインが上昇しても関連銘柄への業績貢献は乏しい。それならば企業ではなくビットコイン自体に買いを入れた方が良い――。そんな個人投資家が増えているようだ。〔日経QUICKニュース(NQN) 田中俊行〕
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