17日の東京株式市場では、仮想通貨関連銘柄が軒並み安となった。情報サイトのコインデスクによると、インターネット上の仮想通貨ビットコインのドル建て価格は17日朝方に1ビットコイン=1万ドル近辺まで下落。前日夕からの下げ幅が3000ドルを超える急落となった。これまでは仮想通貨に関する事業を手掛けているだけで一様に買われてきた関連銘柄だが、今後は選別物色の局面に入っていくとの声も聞かれる。
前日からきょうにかけ、関連銘柄は全面安となった。データ処理を請け負って対価として仮想通貨を得るマイニング(採掘)を手掛けるGMO(9449)は8%安、仮想通貨取引事業に参入を表明しているSBI(8473)は6%安まで下げた。海外市場も同様で、16日の米市場では子会社がマイニングを手掛けるマラソン・パテント・グループは14%安、17日の中国市場では指紋認証でビットコイン決済ができるシステムを手掛ける飛天誠信科技が一時10%安となった。
事業規模全体に占める仮想通貨関連のウエートが高くなりがちな新興企業とその上場市場への影響は確かに大きい。「投機的な資産として、ビットコインはラストリゾートになっている」(カブドットコム証券の河合達憲氏)。今回のビットコイン急落で大きな損失を被った個人投資家が、株式や外国為替証拠金(FX)の取引についての投資余力も低下した公算は大きい。実際、きょうの新興市場では「一部の個人が利益確定売りを急ぐ動きがあった」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘投資情報部長)といい、東証マザーズ指数の下落率は一時2%近くと他の株価指数に比べてもきつい下げとなった。
もっとも「バブル」が崩壊したとしても、仮想通貨の市場自体が消えていくとは考えにくい。市場では「海外送金など一定の需要があり普及が進んでいる。株式市場でも無視はできない」(証券ジャパンの大谷正之調査情報部長)との見方が多い。
マイニングを手掛けるGMOのIR担当者は「下落したといっても当初想定したビットコインの価格を上回っている。業績への具体的な影響は精査中だが、足元の水準ではプラスになる」と説明した。一方、リミックス(2部、3825)やフィスコ(ジャスダック、3807)など、子会社が仮想通貨取引所を手掛けている企業への影響も見極める必要があるだろう。「仮想通貨の下落で取引量が減少すれば取引所の業績は悪化しかねない」(国内証券ストラテジスト)からだ。
取引所やマイニングと分けて考えても良さそうなのが、仮想通貨に必要なブロックチェーン技術だ。国際通貨研究所の志波和幸主任研究員は「自動車産業など他にも展開できる可能性があるように、技術を持つ企業には見直し買いが進む」と話していた。企業規模が段違いに大きいことを考慮する必要はあるが、16日の米株式市場でIBM株は上昇した。デンマークの海運大手とブロックチェーン技術を活用した合弁会社設立を発表し、将来の収益貢献への期待が集まったためだ。
今回のビットコインの乱高下は投資家や市場関係者の大きな関心を集めた。その経験を踏まえた上で、今後は業績への影響や技術力などを精査して銘柄選別する眼力が必要になってきそうだ。
【日経QUICKニュース(NQN) 太田明広】
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