前週末の米市場は「強い賃金で債券はベアスティープ、株は暴落」となった。平均時給が前年比2.9%と賃金上昇の兆しを示したことで「年4回の利上げ」を織り込む動きが意識された。米10年債利回りは「2.75%」というこれまでの「利上げの最終地点」(FRBスタッフ予想)から上方に乖離したまま2.851%へ上昇、「3.0%」(年4回なら3.0%も妥当?)を覚悟する向きも現れたようだ。
一方、米30年債利回りは3.097%と「3.1%」目前で伸び悩み、「まだ年4回利上げは織り込みたくない」という雰囲気も残している。つまり、「米金利は上げきっていない」と評価されているようだ。
前週末の日銀による「指し値オペ&増額」の効果は絶大であった。債券先物オプションでは150円00銭プットと149円50銭プットの売買高がそれぞれ1000億円を上回り(1754億円、1199億円)、建玉は4283億円、2471億円へと膨らんだ。両オプションに絡むデルタ調整の買い(調達買い)が下値を底堅いものとすることが想像される。
一方、150円50銭コールの売買高も2163億円とそれ以上に膨らみ(建玉は3279億円)、「戻り売り」および「利益確定売り」が大量に待ち構えていることも明らかだ(すなわち「押し目買い」はあっても「上値追い」はない)。
本日5日は日銀の国債買い入れは「予告」されていない。しかし、欧米金利上昇という「外部要因」によって、長期金利をゼロ%程度に抑えるイールドカーブ・コントロールが脅かされるリスクが高まる現状では、臨時のオペへの思惑が浮上する。「こうなると毎日実施してもいいのでは」、「買わなければタダだし」(ストラテジスト)と”臨時の指し値オペ”を指摘する声もある。臨時なら10時10分の定刻でなくても、「取引開始前でもいつでも可能だ」とも。
長期金利は前週末2日に節目の0.1%に肉薄
本日の円債相場は、跛行(はこう)性の強い展開となりそうだ。オーバーナイト(海外)の金利上昇基調を受けて海外勢を中心とした債券先物売りが膨らみそうだ。5日移動平均(150円25銭)を跨ぐことで売りが売りを呼ぶ展開も想定し得る。他方、日銀の指し値オペへの期待から「10年債利回り0.100%および0.110%」の手前では国内勢の買いが見込まれる。10年349回債の需給逼迫(スクイーズ)が支えとなろう。
ただ、「20年債利回り0.60%」の押し目買いが積み上がっていることはリスク要因かもしれない。8日(木)に30年債入札を控え、米債のベアスティープをみたヘッジ売りが超長期債の「梯子」が外される可能性にも警戒したい。株安が加速するようだと、リスク許容度低下に伴う持高調整が「0.6%の20年債」の圧縮を急がせることにもなりかねない。
(QUICKデリバティブズコメント)
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