東証1部への昇格を発表すると株価は上昇する。こんな「昇格アノマリー」がある。1部に昇格して東証株価指数(TOPIX)に組み入れられれば、指数に連動して運用する機関投資家などからの資金流入が見込め、知名度も増すからだ。
17日に東京証券取引所は、2部上場のシステム開発企業、アイル(3854)を7月2日付で1部に指定すると発表。アイル株は夜間の私設取引システム(PTS)で18日基準価格に比べて6%高となり、18日午前の取引でも底堅く推移した。
6月は4銘柄の昇格が既に発表されており、株価は平均で9%上昇した。上昇率が最も大きかったのは歯車や減速機を製造する日本ギア工業(6356)で発表翌日に約15%上げた。1部昇格は予想外だったようで、同社が5月上旬に発表した業績上方修正よりも鞍替えの方が株価へのインパクトが大きかった。居酒屋チェーンを展開する串カツ田中(3547)は発表直後に9%上げた。
ちなみに、ジャスダックから2部への昇格を発表したハウスコム(3275)の株価は、前日比変わらずと無反応だった。1部上場でなければ株式市場では材料視されないのが実情だ。
■QUICKの特設サイトでは「昇格候補」などを紹介
QUICKでは昇格が期待される銘柄をピックアップして特設サイト(ユーザー専用)で公表しており、14日時点の候補は67銘柄あった。さらに、この中から3期連続増益、会社計画で今期2桁増益見通しの銘柄をピックアップしたところ、8銘柄が該当。作業服販売大手のワークマン(7564)は時価総額がこの中で最も大きいほか、業績も堅調で本命といえそうだ。
1部昇格に必要な要件の一つとして時価総額がある。2部やマザーズから1部への指定替えの場合は40億円以上、直接1部へ上場する場合やジャスダックからの変更の際は250億円とされる。そのほか、株主数(2200人以上)にも基準があるため、株主優待制度の導入や拡充で個人投資家の獲得に動いている銘柄などは1部昇格を狙っているといえる。また、時間外取引の立会外分売で大株主が株式を売り出すケースが増えている。このため、QUICKでは立会外分売の実施銘柄を対象に候補銘柄をリストアップしている。
一方で、1部上場銘柄が増えすぎて市場のガバナンスが効きにくくなっているなどの指摘もある。市場の区分を見直す議論が始まっており、時価総額の基準などが目安になるとの見方が出ている。(根岸てるみ)
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