QUICKが実施した11月の「QUICK短期経済観測調査」(上場企業386社が回答、回答期間は10月23日~11月6日)で、製造業の景況感を示す業況判断DIはプラス21となり、10月調査のプラス22に比べて1ポイント悪化しました。また、金融を含む全産業はプラス20で、こちらは2ポイントの悪化です。
景気先行きDIは低下…消費税率引き上げの影響が顕著に
景気の先行きに対する見通しは、さらに厳しそうです。景況感の先行きを示す先行きDIを見ると、数字そのものはプラス圏にあるものの、プラス幅は徐々に低下してきました。DIの3か月平均値を見ると、2014年6~8月期調査分の先行きが全産業でプラス28であるのに対し、9~11月期調査分はプラス22となり、6ポイント低下しました。特に製造業の落ち込みが大きく、全製造業で13ポイントの低下となっています。
このように、業況全般がやや後退ぎみになっている一番の理由として、消費税率引き上げの影響を無視することはできないでしょう。2014年4月以降、消費税率は従来の5%から8%に引き上げられました。1~3月期のGDPは、駆け込み需要の影響で大幅に伸びたものの、4~6月期はその反動で大幅低下。7~9月期はさすがに上向くだろうと思いきや、11月17日に公表されたGDPは、よもやのマイナス1.6%。2期連続でGDPがマイナスになったことから、リセッション入りという声も浮上してきました。
円安の影響が景況感の先行きにも影響、価格転嫁難しい
こうした企業の景況感悪化の理由は、消費税率引き上げにともなう消費の悪化もありますが、それと同時に、企業の利ザヤが薄くなっている可能性もありそうです。
今年前半の為替レートは、1ドル=100~103円のレンジで推移していましたが、9月以降、円安が急伸。10月末に発表された黒田バズーカ第2弾で、一気に円安に弾みがつき、11月17日時点で1ドル=116円台の円安水準に達しました。
円安が進めば、国内製造業が海外から調達している原材料の円建て価格が押し上げられます。仕入れ価格の上昇は、企業にとってコストアップ要因になります。もちろん、一方で販売価格を引き上げることが出来れば、コストアップを吸収できるのですが、まだデフレから完全に脱却できたとは言えない状況が、販売価格の動きを見ると分かります。11月調査分では大半が「もちあい」。DIを見ると、製造業は全製造業でマイナスになっています。仕入れ価格の上昇分を、販売価格に転嫁し切れていない状況が浮かび上がってきます。
これは、消費者物価指数の見通しにも表れています。1年後の消費者物価指数について、2%程度(+1.5%~+2.4%)の上昇と答えた企業は、10月調査時点で32.9%でしたが、11月調査時点では30.4%まで低下。これに対して、1%程度(+0.5%~+1.4%)と答えた企業は、10月調査時点の40.8%から45.8%まで上昇しました。それだけ消費意欲がまだ低迷していると、企業側は考えています。
円安の急伸は、まず海外から輸入されている原材料価格に反映されます。一方、消費マインドの回復が遅れ、消費者物価の低迷が長引けば長引くほど、企業の利ザヤが圧縮され、企業の景況感はなかなか改善しないという状況につながりかねません。
特許に対する報酬「欧米並みに手厚くすべき」は8%…今月の特別調査
政府は、「2020年までに有給休暇の取得率を70%にする」という目標を掲げています。
これに対して現状、多くの企業において有給休暇の取得率はどの程度なのでしょうか。厚生労働省は、早ければ2016年春にも、社員の有給消化を義務付ける方針で検討を進めていますが、現状、有給休暇の取得率は、それほど進んでいないのが現状のようです。
ちなみに、今月の特別調査の結果は、次のようになりました。
① 7割を超えている・・・・5%
② 5~7割程度・・・・・・19%
③ 3~5割程度・・・・・・39%
④ 3割を下回る・・・・・・37%
上記の数字は、全産業ベースのものです。ちなみに「3割を下回る」とした回答比が最も高かったのは、非製造業の43%でした。
次に、会社と特許の問題に関する調査です。こちらは、特許庁が特許法の改正案として、仕事上の発明による特許権の帰属先を会社にできるよう検討を進めていることから、特許を会社のものとする場合、開発した従業員への報酬をどのように考えているかという点について、質問したものです。
① 欧米並みに手厚く報酬を与えるべき・・・8%
② 欧米企業ほどではなくても、会社への貢献度を踏まえて報酬を与えるべき・・・44%
③ 仕事に対する奨励金として一定の報酬を与えるべき・・・35%
④ 賞与や昇進で対応すれば良い・・・13%
⑤ 継続雇用による安定した給与・賞与の支払いを考えると、特別な報酬は不要・・・・・・1%
さすがに、④や⑤のような考え方は、日本においても少数派になりつつあり、この点では欧米企業に近い考え方をする企業が増えてきています。ただ、それは同時に、日本のかつての雇用形態の中心だった終身雇用制度、年功序列賃金が、ほぼ過去のものになりつつあることをも、意味しています。