製造業と非製造業の景況感を見ると、明暗が分かれています。
日銀が発表する短期経済観測調査(短観)の先行調査として作成しているQUICK短観(6月1~14日調査分)では、製造業の業況判断指数(DI)は、プラス19となり、前月調査のプラス24に比べて5ポイント悪化しました。一方、非製造業は8ポイント改善の39と好調が続きました。
結果として、金融を含む全産業では前月比3ポイント改善のプラス32となっています。
製造業、先行きは景況感の改善を見込む
悪化した製造業ですが、「先行き」指数を見るとプラス24に改善しています。今後、米国の利上げ可能性が高まり、円安が進めば、製造業にとっては為替差益が期待できるためと考えられます。企業側も、今後の米国経済の動向を見極めたいという状況でしょうか。なお、非製造業の「先行き」指数は38と、ほぼ横ばいを見通しています。
生産・営業用設備や雇用の状況については、5月調査に比べて大きな変化は見られませんでした。
販売価格と仕入れ価格の現状を、金融を除く全産業で見ると、販売価格について上昇から下落を差し引いたDIは、5月調査から変わらず。仕入れ価格は上昇から下落を差し引いたDIが32と、5月調査に比べて3ポイント上昇しました。仕入れ物価の上昇はまだ続いています。消費者物価指数の見通しについては、1年後で1%程度の上昇を見込む回答比が多数を占めました。
コーポレートガバナンスコード導入でどうなる政策保有株?
6月の特別調査は、コーポレートガバナンスコードによる政策保有株式(持ち合い株式)の方針と、長時間労働の削減に向けた取り組みについてアンケートを実施しました。
金融庁と東京証券取引所が6月から上場企業に導入したコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)は、政策保有目的(純投資目的以外の目的)の株式について、経済合理性や将来の見通しを検証し、保有の狙いや合理性を具体的に説明すべきとしています。
<設問1>
コーポレートガバナンスコード導入に伴う貴社の政策保有株式に関する方針をお聞かせ下さい。
1:説明責任を果たし、継続保有する・・・・・・・・24%
2:継続保有か売却か、保有する株式を精査する・・・20%
3:コード導入を機に売却を検討する・・・・・・・・0%
4:具体的に決まっていない・・・・・・・・・・・・33%
5:政策保有目的の株式はない・・・・・・・・・・・23%
コーポレートガバナンスコードの実施により、一部の企業、特に金融機関の政策保有株式の売却が進むという意見がありましたが、アンケートによると、コードの導入を機に売却を検討するという意見は0%でした。
3割の企業が「長時間労働の実態はない」
厚生労働省は従業員に過酷な労働を強いる「ブラック企業」対策を強化し、違法な長時間労働を繰り返している大企業について、社名を公表します。長時間労働の削減に関する取り組みの状況などを尋ねました。
<設問2>
長時間労働の削減に向けた貴社の取り組み状況やその効果をお聞かせ下さい。
1:長時間労働の実態はない・・・・・・・・・・・・31%
2:対応策を実施し効果が出ている・・・・・・・・・40%
3:対応策を実施しているが効果は限られている・・・13%
4:対応策を検討している・・・・・・・・・・・・・10%
5:具体的に決めていない・・・・・・・・・・・・・6%
すでに過半の企業は長時間労働の実態はない、もしくは対応策を実施し効果が出ているとしており、労働環境の改善は徐々に浸透しつつあるようです。