企業の賃上げが焦点になっています。安倍晋三首相は10月、来年の春季労使交渉について「3%の賃上げが実現するよう期待する」と述べました。首相による事実上の賃上げ要請は5年連続です。これに応じる形で、経団連は来年の春季労使交渉でベースアップ(ベア)と定期昇給を合わせた月例賃金を3%引き上げるよう企業に呼びかける方針です。経団連が数値目標を明示するのは異例ですが、賃上げを通じて個人消費を促し、デフレ脱却につなげる経済の好循環を後押しする考えのようです。
上場企業へのアンケート調査「QUICK短観」で来年の賃上げの検討状況について聞いたところ、「小幅」を含めて賃上げを検討している企業は全体の51%にとどまりました。48%は「現状維持」で賃上げに依然として慎重な企業の姿勢が浮かび上がりました。回答企業は381社。回答期間は11月21日~12月3日です。
賃上げを検討している企業の内訳は、「大幅」が3%、「小幅」が48%。ただ昨年11月にQUICK短観で同じ質問をした時と比べると、「小幅な賃上げ」を検討する企業の割合が昨年の34%から今年は48%まで拡大しており、上場企業の賃上げへの意欲は徐々に増していると言えそうです。
回答企業からは「賃上げは政策的に行うものではなく、業績・利益状況を勘案するのが一般論」といった指摘がありました。一方で「多様な働き方や高齢者雇用など、過去とは異なる雇用形態が全般的な所得水準引き上げの重荷になっているのではないか」「パートやアルバイトの賃金が上昇している分、正社員の賃上げは厳しい状況になっている」といった声もありました。
来年の日経平均「2万3000円(今年の高値)を超える」が約4割
今年の日経平均株価は9月以降に上昇基調を強め、11月7日には年初来高値を付けるなど、おおむね「1万8000円~2万3000円」の範囲で推移しました。QUICK短観で「2018年の日経平均はどのように推移すると予想しますか」と聞いたところ、最も多かったのは「今年の水準(1万8000円~2万3000円)にとどまる」で59%、次いで「今年の高値である2万3000円を超えていく」が38%、「今年の安値である1万8000円を下回っていく」は2%にとどまる結果になりました。
米国のトランプ政権の先行き不透明感や、北朝鮮など地政学リスクがあるものの、国内の好調な企業業績を背景に株価の高水準維持を期待する企業が多いようです。
全産業DI、調査開始以降の最高水準を更新
毎月定点調査している製造業の業況判断指数(DI)は前月調査と変わらずのプラス36で、3カ月続けてQUICK短観の調査開始(2006年12月)以降の最高水準を維持しました。非製造業DIは前月比2ポイント改善のプラス40。金融を含む全産業DIも前月比2ポイント改善のプラス40で、調査開始以降、最も高い水準を更新しました。