1月22日召集の通常国会で安倍晋三首相が成立に意欲をみせる「働き方改革関連法案」。首相が旗を振る「生産性革命」へ、企業もIT(情報技術)投資に関心を寄せています。特に残業時間の削減や人手不足が深刻な中小企業では、電話対応の一部を人工知能(AI)で代替するなど、ITツール導入による業務の効率化や生産性の向上が課題となっています。
それでは実際に、IT投資で生産性向上を目指す企業はどのくらいあるのか。上場企業へのアンケート調査「QUICK短観」で来期のIT投資計画について聞いたところ、「増やす」と回答した企業は54%と半数を超えました。回答企業は391社。回答期間は1月4日~16日です。
IT投資「減らす」企業なし 「今期と変わらない」は47%
来期事業計画でのIT投資への取り組みを聞いたところ、「やや増やす」が49%と最多でした。「大幅に増やす」の5%と合わせると、54%が「増やす」と回答しました。一方、「今期と変わらない」が47%で、「減らす」と回答した企業はありませんでした。
回答企業からは「今年度にかなりの生産性向上のためのIT投資を行ってきているので、次年度も同水準というのは、数年前と比較した場合、絶対額では増えているという認識である」という意見がありました。また「流通小売業の変化が今後どのように当業界に影響が出てくるかを注意深く見守り、変化に対応する必要があると考えている」といった声もあり、IT投資の必要性・重要性を無視できない課題と認識しながらも、状況を注視している企業も少なくないようです。
企業が生産性向上のためのIT投資として、具体的に来期、最も注力する分野を聞いたところ、最も多かったのは「業務で使う各種ソフトウエア、アプリケーションの更新・新規導入など」で6割を占めました。次に「ネットワーク・サーバの仮想化、IoT推進などインフラ関連」が15%、「AIや機械学習、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入などOS・ミドルウエア関連」が11%でした。
「テレワーク、フリーアドレスなど多様な働き方を推進するためのモバイル関連」は10%、「メール誤送信防止や生体認証などセキュリティ関連」は4%という結果でした。
社内業務の効率化などを目的とした「守りのIT投資」が多数を占めていますが、IoTやAIなどの新たなデジタル技術を活用し、企業価値の向上や競争力強化に結びつく戦略的な「攻めのIT投資」の機運も徐々に広がっているようです。
全産業DI、調査開始以降の最高水準を更新
毎月定点調査している製造業の業況判断指数(DI)は前月調査から4ポイント上昇のプラス40で、4カ月続けてQUICK短観の調査開始(2006年12月)以降、最高水準となりました。非製造業DIは前月比2ポイント改善のプラス42。金融を含む全産業DIも前月比2ポイント改善のプラス42で、調査開始以降、最も高い水準を更新しました。
※QUICK端末では、QUICK短観の業況判断DI、自社株判断DI、円相場判断DIなど各種ヒストリカルデータをダウンロードできます。