NQNニューヨーク=古江敦子
通信計測機器の米キーサイト・テクノロジーズが26日夕に発表した2019年8~10月期決算は市場予想を上回る増収増益で、19年11月~20年1月期の業績見通しも予想以上だった。ところが決算発表の後の時間外取引で株価はこの日の終値を一時約2%下回るなど乱高下した。キーサイト幹部が決算説明会で、米政府が実施している中国の通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)との取引規制が業績を下押しするとの見通しを示したからだ。
キーサイトは26日、四半期決算とあわせて19年10月期通期の業績も発表した。売上高は前の期比11%増と市場予想を上回った。純利益は6億2100万ドルと前の期の約3.8倍で特別項目を除く1株利益は4.72ドルと市場予想(4.58ドル)を大幅に超えた。次世代通信規格「5G」向け計測機器を含む「通信ソリューション」部門が12%増収と想定以上に伸びたのが主因だ。
ロン・ネルセシアン最高経営責任者(CEO)は説明会冒頭で「5Gやデータセンター、宇宙・防衛、自動運転、仮想現実と多岐に渡る事業が自社の強みだ。世界景気の不透明感にも関わらず、成長基調は続く」と自信を見せた。ドイツ銀行のブライアン・ユン氏は「5Gの商用化はまだ初期段階。通信会社やデータセンターによる計測機器需要がピークを迎えるのは向こう数年後で、キーサイトの先行きには楽観を維持している」と指摘した。
一方、説明会では「米政府によるファーウェイや傘下の海思半導体(ハイシリコン)との取引規制の影響によって売上高が19年11月~1月期に5%、2~4月期に3%押し下げられる」との見通しも示された。キーサイトはこれまで「取引規制の影響は(長期的に)限られる」(ネルセシアン氏)との予想を示してきたが、米中摩擦が長期化すれば3~5月期以降の悪影響は避けられない――。投資家の間にはそんな懸念が広がっている。
米政府は11月からインテルやクアルコム、マイクロソフトなど一部のハイテク企業に対しファーウェイへの輸出を許可する一時措置を講じているが、キーサイトは現時点で取引規制の適用除外を承認されていないもようだ。中国では来年にも5Gの商用化が本格的に始まる見込み。事態収拾が遅れればキーサイトは中国需要の取り込みに後れをとりかねない。
ファーウェイはシンガポールでの5G事業の拡大も発表している。キーサイトはここでも商機を逃す可能性がある。
26日の時間外取引では「米中がIT(情報技術)関連の知財保護問題で合意に向け前向きな協議が続いている」との見方が続いたほか、「5Gという成長分野での需要拡大が持続し、産業・半導体の計測事業の底入れ基調は見られ、株価の上昇余地はある」(サスケハナ・ファイナンシャル・グループ)との解釈から株価は持ち直した。ただ、米中貿易協議の不透明感が残る限り、キーサイト株の上値は重くなりそうだ。
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