日経QUICKニュース(NQN)=松井聡
「先行きは晴れ」。株式市場でこんな声が聞かれる銘柄がある。民間気象情報会社のウェザーニューズ(4825、WNIウェザー)だ。相次ぐ台風で天気や災害に対する関心が高まり、個人向けサービスの利用者が増えている。天気に関する独自のコンテンツなどが強みだ。将来の収益貢献期待も高まっており、24日は3905円まで上昇し、およそ2年8カ月ぶりの高値となった。相場が軟調な中で28日も一時上げに転じるなど底堅く推移している。
天気や防災に関心、個人の利用増
「近くの川が氾濫しそうだ」「台風の進路は大丈夫か」。19年、甚大な被害をもたらした台風15号と台風19号で、お天気アプリを本格的に使い出した人も多いだろう。記者もその一人。WNIウェザーの有料会員となり毎日使っている。アプリには天気のほか、減災・防災、スキーや花粉、星空、桜の開花予想など機能が充実しており、一人暮らしの生活に彩りを与えてくれる。
恩恵を見込むのは個人投資家も例外ではないようだ。「防災意識の高まりで利用者が増え、WNIウェザー株にも恩恵があるのではないか」。有料会員として利用している埼玉県に住む30代の男性は、同社株を保有する理由をこう話す。
思惑だけでなく個人利用者の増加は業績にも表れている。19年6~11月期の連結決算で、全体売上高の6割を占め道路や航海、航空の気象サービスを展開する企業向け事業の伸びが3%だった。一方で、4割を占めスマホ向けアプリなどを展開する個人向け事業は13%増えた。スマホの1日当たり利用者数(DAU)の累積アクセス数も6億8000万と最高となった。
会社側は個人事業の伸びについて「台風などで個人の関心が集まったことで、有料会員数が増えたほか、アクセス数に連動した広告収入も伸びた」(広報担当者)と明かす。
海運など法人向けは収益構造の安定性カギ
15年12月の上場来高値(4580円)更新に向けても視界は良好なのか。市場では今期に始まった新たな中期経営計画がカギを握るとの見方が多い。
16年5月期に最高だった営業利益(33億円)は、企業や個人向け事業の成長拡大へ先行投資を優先したことで19年5月期まで3期連続で減益となった。これに対して、中期経営計画では20年5月期からV字回復し、22年5月期には19年5月期比52%増の31億円を見込むとしている。一方、ある国内証券アナリストからは「個人だけでなく法人との両輪で業績を伸ばす必要があるが、法人は海運などの市況に左右されやすい収益構造で安定しにくく簡単でない」との指摘もある。
きょう東京では一時雪が降り、お天気アプリを利用した人も多かっただろう。個人の認知度を着実に広げて、法人開拓を進めることで業績を伸ばせるか。未来を晴れにするには「V字回復」という予報をしっかり当てることが求められそうだ。
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