【QUICK Market Eyes 大野弘貴】QUICKが実施した12月の「QUICK短期経済観測調査(QUICK短観)」で、製造業の業況判断指数(ディフュージョン・インデックス、DI)はマイナス4と、前月調査のマイナス18から14ポイント上昇した。2009年7月調査の17ポイント改善以来、11年5カ月ぶりの大幅改善となった。全産業(金融を含む)はプラス2と前月調査から4ポイント上昇し、9カ月ぶりにプラスへ転換した。
■TOPIXは上昇したが自社株判断DIは変わらず
業況判断の大幅改善に加え、企業自身による株価判断にも上昇余地がある点は心強い。QUICK短観では企業による株価判断を調査している。自社の株価が「安い」と答えた回答数から「高い」と答えた回答数を減じて算出する自社株判断DIは製造業で56と11月調査から3ポイント上昇した。56は7月調査時と同水準だ。12月調査は11月19日~12月1日の期間に行われたが、この間のTOPIXは1710~1972のレンジで推移していた。対して7月調査は7月1~12日で行われたが、この間のレンジは1533~1579だった。
7月から12月にかけてTOPIXは10%以上上昇したが、自社株判断DIは変わらずの水準を維持している。
■株価上昇は指数高寄与度銘柄の影響
米大統領選以降、相次ぐ新型コロナウイルス(COVID-19)のワクチンの開発進展を受けて、日経平均株価はバブル崩壊後以降の戻り高値を更新した。一方、TOPIXは未だ18年高値を上抜けていない。また、日経平均採用銘柄を見ても、セクターによって大きく騰落率が異なっている。足元の株価上昇は指数主導、さらに指数の中でも高寄与度銘柄の上昇が大きく上昇したことが窺える。
■自社株買いへのインセンティブも
指数だけ見ると高値警戒感を抱かずにはいられない水準だが、個別銘柄では出遅れている銘柄も多く、割安感は企業自身のお墨付きとも言えそうだ。
そんな状況で期待されるのが自社株買いだ。大和証券は14日付リポートで「第3四半期決算発表シーズンでは自社株買いの発表へ注目が集まる季節性がある」と指摘した。「自社の株価が安いと判断すれば、自社株買いへのインセンティブも強まる」(国内ストラテジスト)との声も聞かれた。
16日、都内の新規感染者数が678人と過去最多を更新した。アメリカ、イギリスではワクチン接種が開始されたものの、集団免疫を獲得し再びコロナ前の状態に戻るにはしばらく時間を要すとの見方が多い。
グロース株優位の展開が続く可能性も想定されるが、出遅れ株も出遅れているが故に買われるという状況が迫っている可能性もありそうだ。
<金融用語>
自社株買いとは
自社株買いとは、自己株式取得の一つで、株式市場から過去に発行した株式を自らの資金を使って直接買い戻すことを指す。株式会社が、株主への利益還元やストックオプション(従業員持ち株制度)等に利用するために行う。 なお、自社株を買い入れて消却することで、利益の絶対額が変わらなくても一株当たりの資産価値やROE(自己資本利益率)が向上する。買い戻した自社株を再放出することなく、自社株買いの効果を利益指標に反映する国内企業が増加していることから、2015年1月から、日経平均株価などを算出する日本経済新聞も「自社株を除いた発行済み株式数ベース」で予想1株利益を算出する方式を採用した。