ゴールドマン・サックス出身者が立ち上げたsustenキャピタル・マネジメント(東京・中央)が新しいロボアドバイザー(ロボアド)サービス「SUSTEN」を始める。利益が出たときだけ運用手数料がかかる「完全成功報酬型」で、最新の金融工学理論に基づく運用戦略をとる。サイト上でのポートフォリオ診断と口座開設の手続きを2月15日から開始する。
■日本初の「完全成功報酬型」
最大の特徴は、投資一任に係る費用を日本初の「プロフィットシェア型(完全成功報酬型)」としたことだ。既存の他社のロボアドは年1%前後の手数料を徴収するが、SUSTENは投資家の利益が生じるまで報酬を受け取らない。投資先の上場投資信託(ETF)の経費や受託銀行に支払う信託報酬といった費用(税別で年0.02~0.09%)はかかるものの、顧客が成功報酬を支払うのは投資評価額が過去最高を上回った月だけ。低コストにこだわり、成功報酬料率は過去最高評価額を更新した部分の一定割合とした。
■36パターンのポートフォリオを提供
いくつかの質問に答えると最適な資産配分(ポートフォリオ)で資産運用を自動で行う点は、先行する他社のロボアドと大きな差異はない。独特なのは資産運用のニーズを3系統に分け、「投資の3原色」の組み合わせで自分に合った色(=ポートフォリオ)を表現できるという考え方だ。
3原色のうち赤を「世界の経済成長の恩恵を享受しやすいタイプ」、緑を「景気に連動しにくい絶対収益型のタイプ」、青を「リスクの低い守りに徹したタイプ」と定義。これまでの資産運用サービスに不足しがちだった「緑」の要素を取り入れ、3色全てを用いた9種類36パターンのポートフォリオ(図表)で一人ひとりの資産運用ニーズに応える。
同社はサービス開始に先立ち、昨年10月からロボアドに用いる3色に相当する「グローバル資産分散ポートフォリオ(R)」、「グローバル複合戦略ポートフォリオ(G)」、「グローバル債券ポートフォリオ(B)」を運用している。
■群雄割拠のロボアド業界、生き残りにあの手この手
このところ、ロボアド業界では大きな動きがいくつか出てきている。昨年12月は国内最大手のウェルスナビ(7342)が東証マザーズに上場。大手銀行などとも連携し、足元の預かり資産額(残高)は3500億円を超える。株価は現在のところ、公開価格(1150円)を大きく上回る水準で推移しているが、20年12月期の税引き損益は12億円の赤字(前期は20億円の赤字)の見込みで、黒字化にはさらなる残高積み増しによる収益拡大が必要だ。
「THEO(テオ)」を運営するお金のデザイン(東京・港)は今月19日、証券口座や顧客管理などに関わる業務を会社分割(吸収分割)でSMBC日興証券に8月1日をもって譲渡すると発表した。THEOの残高は約800億円に成長したが、自社完結型のビジネスモデルから脱却し、運用に専念する道を選択した。SMBC日興の参入でロボアド業界の勢力図がどう塗り替わるか注目される。
2016年に日本でロボアドが誕生して約5年。資産形成層をターゲットに群雄割拠でしのぎを削り、ここから手数料引き下げ競争の本格化を予想する声も出ている。岐路の年に表れたsustenキャピタル・マネジメントが台風の目になるかもしれない。
(QUICK資産運用研究所 石井輝尚)