バイレンタインデーの14日。近所の広場の人出はまばらだった。広場の中心に位置するステーキハウスは営業を停止したまま。ホームセンター「ホームデポ」やアマゾン傘下のスーパーマーケット「ホールフーズ」に長い行列ができているのと対照的だった。
米国で新型コロナウイルスの感染増加ペースが鈍化した。ニューヨーク・タイムズ紙のまとめでは、13日に確認された感染者は8万4727人。少ないとは言えないが、1月は30万人を超えていた。2週間前の水準から37%の減少だ。高止まりしていた死者数は、3373人と2週間前の水準から16%減。ワクチンを少なくとも1回接種した人が全米人口の12%に達した。
米国株はコロナ前上回る
コロナ禍の長いトンネルの先に光がみえるなか、米国株式市場の主要株価指数は最高値を更新し、コロナ禍前の水準を大幅に上回った。米連邦準備理事会(FRB)の超緩和措置に加え、バイデン政権が成立を目指す経済対策への期待が大きい。
米国のエコノミストは当初、米国経済の回復がU字型かL字型のいずれかになると予想していた。ゆっくり回復するのはU字型、低迷が長期化するのはL字型だ。ここに来てL字型回復になると考える市場関係者が増えた。一方で回復の二極化を示すK字型をめぐる報道も目立つ。幅広い分野で二極化が進んでいると伝えられた。
身近なところではK字回復が鮮明だ。在宅勤務がニューノーマルになり、ホームセンター、家電量販店、スーパーマーケットの売上高がコロナ前の水準を超えた。半面、レストラン、小売店、エンターテインメントが回復する兆しがみえない。近所の映画館は1年近く営業していない。
住宅市場もK字回復が鮮明になった。全米不動産業協会(NAR)によると、2020年第4四半期(10~12月)の一戸建て住宅の価格中央値は前年同期比14.9%上昇の31万5000ドルだった。統計がさかのぼれる1990年以降で最大の上昇率になる。筆者が住むロサンゼルスのプラヤビスタでも住宅取引が活発で、不動産情報ジローによると、過去30日で8軒のコンドミニアムが売れた。いずれも日本円に換算して1億円を超える物件だ。
家賃の未払いが倍増
一方で、ニューヨーク・タイムズは、家賃の未払い件数が倍増したと報じた。家賃未払い、遅延金、公共料金等の未払いが1月時点で530億ドルに達したとするムーディーズ・アナリティックスのデータを引用している。
K字回復が進み、米国では富裕層と一部の企業がかつてないほど豊かになったとされる。CNBCは米ワシントン州の議員が10億ドル(約1050億円)を超える個人資産に1%の富裕税を課税することを提案したと報じた。アマゾンのベゾス氏と元夫人、マイクロソフトの共同創業者ゲーツ氏らが対象になる可能性がある。ニューヨーク・タイムズ紙によると、メリーランド州の議会は12日、フェイスブック、アマゾン、グーグルなどIT大手のデジタル広告の売上高に新税を導入する法案を可決した。
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Market Editors 松島 新(まつしま あらた)福井県出身、慶應義塾大学卒。1985年テレビ東京入社、報道局経済部を経てブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長を歴任。ソニーを経て2011年からマーケット・エディターズの編集長として米国ロサンゼルスを拠点に情報を発信