NQN香港=桶本典子
株価指数を開発・算出する米MSCIは11月26日、「新興国株指数」への中国株の組み入れ比率を20%に引き上げ、今年予定していた3段階に分けての引き上げを終了した。2017年にMSCIが中国株組み入れを決めてから2年あまり。中国市場では「巨額の海外資金が相場を押し上げる」との期待が高まり、当時はさながら「MSCI祭り」の様相もあったが、実際の中国株式相場が大きく上昇したとは言いにくい。
上海総合指数の今年の高値は4月19日の3270で、安値は1月3日の2464。5月初旬に心理的節目となる3000を割って以降は、おおむね2800~3000のボックス圏での推移となっている。中期的にも上海株は15年に5000を超す水準まで上昇したが、その後は4年近く3000近辺での値動きが続く。
海外資金の流入自体は増えている。香港取引所の決算資料によると、MSCIが組み入れを決めた17年に、相互取引を通じた「北行き」(香港から上海・深セン市場への資金流入)の売買代金は、上海・深センを合わせて前年の約3倍に増えた。16年末に香港と深センの相互取引も始まったためMSCIだけが資金流入を誘ったとは言えないが、18年は逆方向の「南行き」の勢いが鈍ったのに反し「北行き」の大幅増は続き、海外投資家が中国株投資に前向きだったことが分かる。
それでも相場が動かなかったのはなぜか。理由の1つには、証券相互取引経由の資金が市場全体に占める存在感が、まだ小さいためだ。上海市場の場合、普段の取引で相互取引が占める割合はせいぜい全体の1割程度。3日午前も80億元と、全体(757億元)の11%だった。深セン市場も傾向は同じで、中国市場の主役はあくまでも国内投資家だ。
2つ目の理由は「この数年は相場を取り巻く環境がさえず、多少の資金流入では上昇できなかった」(TCコンコルド証券投資総監の潘鐵珊氏)こと。中国景気の減速懸念が続き、米中貿易摩擦の長期化にも悩まされた。特に上海市場は上場銘柄に旧来型の国有企業が多いため、政府の買い支えは得やすい。半面、この数年間の世界的なトレンドだったハイテク株買いの流れにも乗れなかった。
3つ目は、投資家の株式投資意欲が低迷している可能性があることだ。15年の人民元ショック後、中国当局は株乱高下の元凶として信用取引の一種である「場外配資」を厳しく取り締まった。株だけでなく、仮想通貨や企業の急激な海外進出、不動産高騰など投機的な動きに対する取り締まりが強まってきた。投資ムードが萎縮するなか株式相場は動きが鈍り、大きく上がることも値下がりすることもなくなった。投資しても「動きが見込めないことに投資家が嫌気がさした」(内藤証券上海代表処・首席代表の王萍氏)ようにもみえる。
海外資金の流入は今後も拡大する見通しだ。MSCI以外に英FTSEラッセルも6月から中国株を主要な株価指数に採用しており、海外投資家の中国株への期待は根強い。「銀行など国有大手の業績は改善している」(TCコンコルド証券の潘氏)「(取り締まりの結果)投資先として残るのは既に株式だけで、投資家は戻ってくる」(内藤証券上海の王氏)と、中長期的な相場上昇を見込む声は現地でも多い。上海株はその期待に応えられるだろうか。
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