NQN香港=桶本典子
日本の小中高校が一斉休校に入って1週間あまり。親にとってそろそろ気になるのが、子供の勉強の遅れではないだろうか。新型コロナウイルスの拡大が先行した中華圏では休校措置も先行し、1月下旬の春節(旧正月)から幼稚園や小中高校は休みだ。オンライン教育の需要が高まり、株式市場でも関連銘柄が一時急伸した。ただ最近は課題も意識され、株価の上値が重くなっている。
上海は市を挙げてのオンライン対応
「停課不停学(休校でも勉強は休むな)」。休校開始後、香港を含む中華圏の教育関係者や親の間で交わされる合言葉だ。香港の場合、休校措置は4月20日までたっぷり3カ月間。家事代行が普及しているため子供の世話への心配は聞かれないものの、公立中学への入学に選別試験があり学力でランク分けされるなど、もともと教育熱は高い。休校に伴う勉強の遅れへの危機感は強い。
そんななか、親や教師たちが頼るのがオンライン教育だ。上海市は今月2日、「空中課堂」と呼ばれる全市あげてのオンライン授業を始めた。補習塾に当たる民間のオンライン教育の需要も急増し、株式市場でも関連株が急伸。オンライン教材などを生産・配信する深圳上場の深圳市方直科技は2月28日に一時29.56元と、休校前の1月23日終値(13.05元)の2.3倍に値上がりした。
期間中は無料、収益増に貢献せず
ところが、今月は上値の重さが目立つ。方直科技は2月28日の高値更新後に7日続落し、足元では20元を下回って推移する。香港市場でも同業の新東方在線科技控股が、2月7日に付けた直近高値から2割超安い水準に下落している。需要増を期待した買いが一服したためもあるが、収益構造を改めて見直すと、休校が意外に業績に貢献しない可能性もみえてきた。
オンライン教育会社の多くは、今回の休校期間の使用料金を無料にしている。前述の「空中課堂」は市政府などが使用料を負担するとはいえ、エンドユーザーである生徒たちは無料で利用している。ネットサービスは一般に、無料顧客が必ず有料顧客に移行するわけではない。香港証券会社の交銀国際は2月末、オンライン教育企業について「休校で登録者が増えても収入に結びつく可能性は低い」と指摘した。
授業料は新学期開始前に一括徴収済み
一方、堅調さを取り戻しているのが従来型の学校運営銘柄だ。中国で私立一貫校を運営する中国宇華教育集団は11日の香港市場で一時5.91香港ドルと、休校前の1月24日(5.76香港ドル)を上回る水準まで戻した。こうした学校は「授業料は昨年9月の新学期開始前に一括して徴収済み」(中国の光大証券の4日付リポート)との指摘が出て、強固な収入確保体制が見直されている。
「休校はオンライン教育セクター内で選別の契機となる」(民衆証券の郭思治・董事総経理)との見方も広がる。「無料配信で得た顧客のビッグデータをどこまで収益に結びつけられるかが、中長期的な事業の成功を左右する」(郭氏)というわけだ。インフラの普及でオンライン教育の市場は拡大方向にある。今後は各社の事業戦略とサービスの質の向上が競争のカギを握りそうだ。
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