典型的な金融相場の展開となる中、「もうはまだなり」の相場格言を地で行くように、予想を上回って上昇傾向が続いている。悲観派がいる限りは上昇するのが相場だ。6月のQUICK月次調査<株式>によると、運用ファンドのウエートに対する質問では「ニュートラル」が5月から11ポイント上昇し、53%に達した。「ややオーバーウエート」の回答は18%と5月から6ポイント低下。「ややアンダーウエート」の回答も5ポイント低下はしたものの、29%と「ややオーバーウエート」の割合を上回る。
また当面の投資スタンスを問う回答には、「やや引き上げる」が30%と、5月から17ポイント増加した。「やや引き下げる」「かなり引き下げる」の回答も増加はしているものの、相場の上昇に対して買い遅れていた投資家の買い増し余地をうかがわせる(図1-1、2)。
■「電機・精密」が安定のプラストップ
とはいえ、2021年3月期決算企業で予想を開示していない企業は6割近い1346社(10日時点)となっている。業績の裏付けのない株高であるがゆえ、物色動向に広がりを感じないのも事実だ。セクター別の投資スタンスでは「オーバーウエート」と「アンダーウエート」の差し引きで「電機・精密」が安定のプラスのトップで、時価総額上位が多い「自動車」はマイナス15%、「金融」もマイナス35%。「医薬・食品」が5月のゼロから再びプラスの5%に浮上しており、守りを固める銘柄と株価上昇を追える銘柄の人気は不動だ(図2)。
■「二番底」への懸念
背景には「二番底」への懸念が拭えないこともありそうだ。月次調査では日本の株価が二番底を迎えるのはいつごろかの問いに「ない」との回答が32%あったが、20年9~12月(32%)、20年8月まで(27%)、21年1~3月(6%)と、全体で見れば年内は二番底の到来を警戒する向きが多い。上昇ピッチの速さを考えれば「山高ければ谷深し」の格言も頭をよぎる(図3)。
ちなみに二番底の水準は単純平均で「1万8904円」、中央値で「1万9000円」、最頻値で「2万円」だった。きっかけが「新型コロナウイルスの感染再拡大」を予想する声が70%と最も多く、次いで「米中対立の激化と覇権争い」が45%に達する。
■298社が営業利益の最高益を更新見込み
いつにも増して不確定要素が多い状況下とはいえ最高益を見込む企業もある。QUICK特設サイト「最高益企業を探せ!」では298社(TOPIXベース、5日時点)が営業利益の最高益を更新する見通しだ。
連続更新の常連組もあれば、久しぶりの更新となる銘柄も目立つ。こうした銘柄はこれまで物色の圏外に置かれていた可能性も高いため、改めてチェックしておきたい(図4)。
石井鉄工所(6362)は93年以来、28期ぶりの更新となる見通し。同社は石油タンクを手掛けており、前期の受注残の積み上がりを背景に工事の進捗が順調に進む見通し。将来の収益に関わる受注動向には注意したいが、PER(株価収益率)も10倍台にとどまるほか、不動産の含み益が200億円あまりに達する(19年3月期)ことを踏まえると、含み資産銘柄とも見ることができそうだ。
水道施設の建設管理・運営を手掛けるメタウォーター(9551)は、改正水道法の施行で官民連携での運用需要が増えており、大型案件の進捗が業績をけん引するもよう。生活の重要インフラであり、上下水道施設の老朽化や人手不足といった課題を自治体が抱える中で、今後も引き合いが期待されそうだ。インターネット接続の朝日ネット(3834)やウェブ会議システムのブイキューブ(3681)は新型コロナ後の新常態が事業成長に弾みをつける可能性もある。
一方、近鉄グループホールディングス(9041)や京王電鉄(9008)など新型コロナウイルスが逆風になる公算が大きい。足元の業況のきめ細やかな点検は必要となるものの、最高益更新には個々の背景が存在する。銘柄発掘の一助にしたい。(QUICK Market Eyes 弓ちあき)
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