株式市場で物流関連株が高成績を上げている。巣ごもり需要による電子商取引(EC)市場の活性化が業績の追い風になっているためだ。米小売最大手のウォルマートでもネット通販が倍増するなど、新型コロナウイルスの感染拡大で宅配需要は一段と伸びている。物色が集中し過熱感が高まる銘柄もあるなか、選別の必要性も出始めている。
■米ウォルマートのEC事業が急成長、日本株にも連想物色
19日の東京市場で話題だったのが米ウォルマートが18日に発表した2020年5~7月期決算だ。売上高は前年同期比で6%増え、特別項目を除いた1株利益は1.56ドルと、市場予想を上回る好調な内容だった。特にEC関連の売上高は目を引く。米国のEC事業の売上高は同97%増と、ほぼ倍となった。決算発表後の電話会議では「リピート率やアクティブユーザーも増えた」との説明があった。
ウォルマートの好調さは東京市場にも引き継がれ、国内でもECが増えるとの連想を抱かせ、関連銘柄として物流を物色する動きになっている。取り扱う貨物の量が増えるとの見方から陸運株の一角は堅調だ。例えば20年4~6月期に営業増益だったSGホールディングス(9143)株は19日に上場来高値を更新し、昨年末比では倍近くになった。ヤマトホールディングス(9064)や丸和運輸機関(9090)も年初来で50%超上げた。
■「3PL」銘柄として人気化する日立物流
とりわけ足元で人気化しているのが、企業の物流業務を一括受注する「3PL」に強みを持つ日立物流(9086)だ。7月30日に20年4~6月期連結決算(国際会計基準)を発表した後に株高が進み、19日に3550円と上場来高値を付けた。4~6月期の営業利益は前年同期比12%減の69億円と、市場予想(48億円)を大幅に上回って着地した。
新型コロナで日用品など小売店向けの需要が強まったがそれだけではない。需要が落ち込む自動車部品関連の部門から繁忙なセクターに人員を移し、想定以上に外注費を抑制できたことがサプライズにつながった。
巧みなコスト管理が奏功している日立物流はECにも力を入れる。中小事業者で物流設備や倉庫スペースを共有する「ECプラットフォームセンター」が19年9月に本格始動した。受託企業数は7月時点で約20社と裾野は着実に広がっている。従量課金制で売上高の規模は年間10億円程度と現時点では小さいが、「省人化や省力化を実現してEC関連需要に対応する方針は評価できる」(岡三証券の山崎慎一シニアセクターアナリスト)との声が出ている。ファンケル(4921)など大口顧客をつかんできたノウハウが蓄積されている。
■指標面の割高さに警戒必要
もっともEC関連には今後、ふるい分けされる局面も出てきそうだ。宅配を巡っては、オイシックス・ラ・大地(3182)が4~6月期、野菜ネット通販サービスの顧客1人当たり月単価が前年同期比で24%増となるなど、業績は良好だ。その一方でPER(株価収益率)が急速に切り上がるなど関連銘柄の指標面での割高感は否めない。
岡三証券の山崎氏は「EC関連が引き続き物色の軸となる可能性は高いが、日立物流のようなコスト抑制を実現していたり成長シナリオを持っていたりする銘柄への注目度が高まっていく」とみていた。〔日経QUICKニュース(NQN) 田中俊行〕