総務省が11月６日発表した９月の家計調査によると、２人以上世帯の消費支出は前年同月比10.2％減となった。新型コロナウイルス感染の収束が見えない中、特に感染リスクへの警戒が根強い飲食関連の不振が目立つ。政府は飲食需要の喚起策「Ｇｏ　Ｔｏ　イート」事業で下支えを狙うが、苦境の本格的な打開につながるかは不透明だ。

■飲食関連消費の落ち込み続く

９月の家計調査は、新型コロナの影響によるサービス関連消費の落ち込みが続いた。前年同月は10月の消費税率引き上げを控えた駆け込み需要が膨らんでいた反動もあって、前年同月比の減少率は比較可能な01年１月以来４番目の大きさとなった。

季節調整をした前月比で見れば3.8％増と２カ月連続の増加で、消費全体では底入れの兆しがうかがえる半面、飲食関連の消費は引き続き厳しい落ち込みをみせている。食事代は前年同月比21.3％減、飲酒代は同54.6％減と半減した。感染への不安から、外での飲食を自粛する傾向は変わっていないとみられる。

帝国データバンクの調査（10月13日）によると、20年度上半期の飲食店事業者の倒産は392件と、上半期としては比較可能な2000年以来過去最多となった。帝国データバンクの綴木猛氏は「飲食店事業者は経営基盤が脆弱であることが多い」と指摘。下半期も倒産ペースは鈍らず、年間で飲食店の倒産件数が過去最多となる可能性もあると話す。飲食店の相次ぐ倒産がさらに消費をしぼませる悪循環も考えられそうだ。

■「Ｇｏ　Ｔｏ　イート」の効果は薄い

政府が推進する「Ｇｏ　Ｔｏ　イート」は話題こそ集めているが、実際は飲食消費全体の起爆剤になるほどの効果は乏しいとの指摘がある。事前に購入した食事券を支払いにあてるものと、オンライン予約をした食事の後に付与されるポイントを利用するものがあるが、給付額はそれぞれ、農林水産省における公募が終了した10月１日時点で868億円と616億円で、総予算が１兆円を超える「Ｇｏ　Ｔｏ　トラベル」に比べ圧倒的に少額だ。オンライン飲食予約も昼食で500円分、夕食でも1000円分のポイント付与にとどまるため「消費を喚起する効果は薄い」（ＳＭＢＣ日興証券の宮前耕也シニアエコノミスト）。

また「ポイントによる決済は食事代には計上されない」（総務省）ため、10月以降の家計調査における食事代は実態よりさらに低い数字になる可能性がある。つまり、ポイントを活用した実質無料の飲食を目的とした、くら寿司（2695）の「無限くら寿司」などは、統計上の食事代を押し上げることにはならない。

新型コロナは飲食時の感染リスクが高まるため店側、客側とも多人数を敬遠しがちなことも、飲食店の利益の下押し要因となる。宮前氏は「本来11月ごろから飲食業は忘年会シーズンでかき入れ時になるはずだが、感染リスクへの懸念から需要回復は厳しい」と予想する。新型コロナの感染収束が確実になるまで、飲食需要の本格回復を期待するのは難しそうだ。〔日経ＱＵＩＣＫニュース（ＮＱＮ） 大貫瞬治〕