【QUICK Market Eyes 大野弘貴】29年ぶりの高値圏にある日経平均株価。しかし、株式市場の盛り上がりはいま一つだ。東証一部全体の値動きを示すTOPIXの出遅れ感が強く、いまだに年初来高値すら更新できていない。この状況が何を示唆しているのか。ストラテジストたちの関心も高い。
■TOPIXは18年高値を上抜くまでに至らず、押し戻される公算が大きい=SMBC日興
SMBC日興証券は11月13日付のテクニカルリポートで、日経平均株価は11月初め以降、上昇の勢いが強まり、2018年高値(2万4270円)を上抜き、「新たな上昇波動への移行が確認された」と指摘した。
一方で、3月以降、株式の押し上げ要因となってきた米国長期国債利回りが上昇し始めているなど、「米国株が3月以降の急騰でいわば伸び切った状況にある」とも指摘。過熱感、割高感のあるナスダック総合株価指数やS&P500種株価指数は高値を前に足踏みが続いていることからも、「今後、追加経済対策が具体化すれば、一段の上値を試す可能性があるが、その場合には長期金利が一段と上昇し、株式市場の調整の引き金になる可能性があろう」との見方も示された。
日本株市場でも、日経平均株価は新たな上昇局面へ移行したことが確認されたが、「東証株価指数(TOPIX)は依然、昨年12月の高値(1747)を超えられていないと指摘。「TOPIXは当面1850処のフシが上値抵抗となり、18年高値(1911)を上抜くまでには至らず、押し戻される公算が大きい」との見方が示されている。
それでも、「日経平均も当面は2万5870円までで上昇一服か」とした一方、既に18年高値を上回ったことから「相対的には下げに対する耐性が強いと思われ、短期的な下値固めが進めば、21年以降には上昇波動が一段と拡大する」との長期展望も示された。
■TOPIXは18年高値を10%下回る水準、楽観的になり過ぎている面も=みずほ証
みずほ証券は13日付のストラテジーリポートで、「日経平均は29年ぶりの高値だが、東証株価指数(TOPIX)は年初来高値を抜けていないばかりか、2018年1月の高値より10%下なので、今後はバリュー業種の比重が高いTOPIXが高値を抜けるかが注目されよう」との見方を示した。
また、「最初は世界的な過剰流動性相場だけだと思っていたが、株式市場は2021年の世界経済がコロナ前に完全に戻ることを織り込んでいるのかもしれない」とした上で、「東証1部の20年度中間決算における純利益が当初予想より良いのは事実だが、21年度の約50%増のV字回復予想は楽観的過ぎる」と指摘。「機関投資家からもバブル相場に入っているので、バリュエーションは関係ない、相場について行くだけ」との声が聞かれたことを引用しつつも、「米個人投資家協会(AAII)の投資家センチメント調査で強気が55.8%と約3年ぶりの高水準になっており、楽観的になり過ぎている面があろう」との見方も示されている。