【QUICK Market Eyes 大野弘貴】11月25日終値時点で11月日経平均株価は3319円高と1990年10月(4210円60銭高)、90年5月(3546円高)に次ぐ史上3番目に大きい月間上昇幅を記録している。特筆すべきは90年はバブル時の高値から急落したリバウンド局面で発生したが、足もとは上昇局面であることだ。
■センチメントはコロナ・ショック前水準に
米大統領選を終え、新型コロナウイルスのワクチン開発進展から不透明感が後退。11月の日本株は歴史的な上昇相場を演じている。株高を背景に市場心理も大幅に改善した。米個人投資家協会(AAII)がまとめた12日に公表した週間調査では、強気の回答比率が55.84%と18年1月4日以来の水準まで上昇した。同比率は翌週19日時点に44.35%まで低下したものの、20年1月23日(45.6%)の高水準を維持しており、米国の個人投資家のセンチメントはコロナ・ショック前の水準に戻っている。
各機関が取りまとめるセンチメント指数でも楽観的な見方が広がっていることが確認できる。米CNNが相場の基調や高値更新銘柄の数、リスク資産への需要など7項目をもとに投資家心理を測る「フィア・アンド・グリード(恐怖と欲望)指数」は25日時点で91と、投資家が「究極の欲望」を感じていることを示す水準にある。
ゴールドマン・サックスが個人・機関、外国人投資家の過去12カ月における株式ポジションを基に算出するセンチメント・インディケーターも大幅に上昇し、多くの投資家が株式のエクスポージャーを引き上げた様子が伺える。
■「FOMO」を意識
全米アクティブ投資家協会(NAAIM)が会員の運用会社に米国株の保有状況を聞き取り算出する「NAAIM Exposure Index」は18日時点で前週比10.11ポイント上昇した106.41%となった。100%は「フル・インベスト」を表し、100%超はレバレッジをかけて投資している状況を示す。100%超となったのは10月14日時点以来となる。
NAAIMは19年を通じて最高でも100%未満だったが、20年8月以降はより強気姿勢が鮮明となっている。
※「NAAIM Exposure Index」のサイトより
「今月に入ってからは売り優勢」(外資系証券のトレーダー)との声も聞かれるように、日経平均が大幅に上昇する中、相応の利益確定売りも出ていると見られる。それでも、91年以来の高値圏まで上昇し投資家心理が強気に傾く中、日経先物のオプション取引では、12月限で権利行使価格3万円超えのコールが買われるなど、「FOMO(Fear Of Missing Out=取り残される恐れ)」を意識した動きも見られる。
「まさに、お祭りモード」(国内証券会社)や「音楽が鳴り続けている間は踊り続けなければならない」(外資系運用機関)などといった声も聞かれた。
■死角は?
総楽観に傾いていることが窺える足もとの株式市場だが、死角はないか。JPモルガンは20日付リポートで、伝統的な株式60%、債券40%のポートフォリオは、足もとの株価上昇により11~12月末までに約1600億ドル、今後も株価上昇が続けばさらに1500億ドルの株式売却が行われる可能性が高いと指摘した。今後は株価が上昇したがゆえに機械的な売りも発生すると見られる。FOMOが意識される相場展開となったが、ロングのポジションが傾きつつある現状こそ、思わぬ形での急落に備えるべきかもしれない。
<金融用語>
エクスポージャーとは
エクスポージャーとは、投資家の持つポートフォリオのうち、直接的にかかわる特定のリスクにさらされている資産の割合のこと。また、市場の価格変動の影響度合いを意味する感応度しても用いられる。株式では先物やβが、債券ではデュレーションやコンベクシティが、それぞれエクスポージャー(感応度)調整で利用される。英語表記はExposure。