【QUICK Market Eyes 大野弘貴】主要企業の業績に対するアナリスト予想の変化を示すQUICKコンセンサスDI(QCDI)は、11月末時点で金融を含む全産業ベースでプラス21と、前月のマイナス2から23ポイント改善した。5カ月連続の改善となり、2018年8月以来のプラス圏に浮上した。改善幅は8月末時点の前月比33ポイント以来の大きさとなった。
■ようやく上方修正が上回った
今回同様、マイナス圏からプラス圏に大きく伸びた例は13年2月にも見られた。この時は13年1月末のマイナス12からプラス20に32ポイント改善していた。その後のTOPIXはアベノミクスがスタートしたこともあり、大幅に上昇した。
QCDIの中でも日本の株価指数動向と強い相関がみられる製造業DIもプラス27と前月から33ポイント改善した。改善幅の大きさは13年2月(48ポイント改善)以来となる。
アナリストによる企業業績予想も、ようやく上方修正数が下方修正数を上回った。実際に企業業績が改善に向かうという安心感が、相場の底堅さに繋がりそうだ。
■海外投資家は日本株を買い越し
一方でダウ工業株30種平均と日経平均株価の差で求めるスプレッドは3000近辺まで縮小した。
QCDIの業種別内訳と業種別TOPIXの年初来騰落率を重ねて確認すると、10月末時点ですでにQCDIがプラスに転じていた先は、年初来の株価パフォーマンスが良いことが確認できる。
野村証券は11月13日付リポートで、TOPIXの1株利益(EPS)がMSCIコクサイのEPSに比べて相対的に大きく改善する際に、海外投資家が日本株のアンダーウエート幅を縮小させてきた大まかな傾向が読み取れると指摘していた。実際、11月に入り海外投資家は日本株を2.7兆円以上(東証、現先合計)を買い越した。
新型コロナウイルスのワクチン開発が進展したことで、11月の株式市場は世界的に記録的な上昇となった。ただ、今年に入って在宅勤務などのDX(デジタルトランスフォーメーション)化が短期間で進展したこともあり、全ての生活スタイルがコロナ・ショック前に戻るとも言い切れない。
QCDIが広範にわたりプラス圏に浮上したことで一段の買い安心感に繋がる可能性がある。ただ、出遅れているという理由だけでなく、継続して業績が改善・拡大傾向にある企業ほど株価がアウトパフォームするといった状況に変わりはなさそうだ。
◆QUICKコンセンサスDIとは◆
アナリストが予想連結純利益を3カ月前時点に比べて3%以上、上方修正した銘柄を「強気」、下方修正した銘柄を「弱気」と定義し、「強気」銘柄が全体に占める比率から「弱気」銘柄の比率を差し引いて算出する。DIがマイナスなら、下方修正銘柄が上方修正銘柄を上回っていることを意味している。5社以上のアナリストが予想している銘柄が対象で、主要企業の業績に対する市場全体の期待値が上向きか、下向きかが分かる。