金融市場でユーロの先高観が強くなっている。QUICKと日経ヴェリタスが共同で実施した6月の月次調査<外為>によると、回答者の7割近くが年内に1ユーロ=135円を超えるユーロ高・円安を予想した。欧州圏でワクチン接種が進展していることに加え、コロナ禍から経済の立て直しに向けて創設された欧州復興基金が後押しし、景気回復への期待が高まっている。
ユーロは今年に入り一貫して上昇している。年初は1ユーロ=126円台の水準で、足元は1ユーロ=133円台だ。調査でユーロ高となる要因を聞いたところ(複数回答)、回答数の4割が「新型コロナワクチンの接種進展」となり、続いて「欧州復興基金を背景にした景気回復期待」が2割だった。
国際通貨基金(IMF)は2021年のユーロ圏成長率を4.4%と予想する。米国の5.1%には及ばないものの、日本(3.3%)を1%以上、上回る水準だ。
年内のユーロの値動きを尋ねると1ユーロ=135円台までユーロ高が進むとの回答が32%と最も多かった。138円以上の円安・ユーロ高を予想する回答も12%あった。みずほ銀行の唐鎌大輔氏は「ユーロ圏の経常黒字の拡大で、ユーロ高基調は続くだろう」と予想する。
ワクチン接種が進み経済が急速に回復している米国のドルに対しても、ユーロは相対的に強いとの見方だった。現在の1ユーロ=1.21ドル台が高値になるとの見方は14%にとどまり、8割が一段のユーロ高・ドル安を予想した。三菱UFJ銀行の内田稔氏は「米国の経常赤字やドルの過剰流動性などからドル安局面が続く。相対的にユーロ高となる」と解説する。
ユーロ高のシナリオが修正される要因として、市場では「欧州各国でコロナによる行動制限を解除できない場合、ユーロの上昇も頭打ちになる」(国内銀行)との声があった。三菱UFJ銀の内田氏は「仏独などで極右政党が台頭した場合」を欧州経済のリスクとして指摘している。
欧州中央銀行(ECB)が10日に開いた理事会では、金融政策の変更はなく、緩和的な金融政策が維持された。調査で米連邦準備理事会(FRB)が量的緩和措置の解除を表明する時期について聞いたところ「21年9月まで」との回答が4割となり、5月の調査と比べ15ポイント増えた。雇用情勢の改善などで、米国がいち早く金融緩和の出口に向かうとの見方が増えている。
調査は6月7~9日に実施した。金融機関や事業会社の外為市場関係者88人が回答した。