市場参加者は年末に向けた円ドル相場が小幅な値動きになると予想している。QUICKと日経ヴェリタスが共同で実施した8月の月次調査<外為>によると、12月までは1ドル=108~112円で推移するとの回答が最多だった。米連邦準備理事会(FRB)は量的緩和の縮小(テーパリング)を示唆しているが、新型コロナウイルスのデルタ株の感染拡大が米国景気にマイナスになるとして、円ドル相場は横ばいの展開を見込んでいる。
デルタ株は米国を含め世界で感染を広げている。年後半の米国景気への影響を聞いたところ、6割が「成長率を小幅に押し下げる」と回答した。FRBの金融政策のかじ取りも慎重になると予想しており、テーパリングをいつ始めるかとの質問では「2022年3月以降」との回答が27%だった。前月調査時より8㌽多く、後ろ倒しになるとの見方が増えている。
外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長は「7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でパウエル議長がテーパリング開始時期について『今後複数の会合で議論する』と話したため、予想より遅れるとの見方に傾いた」と話す。
FRBが重視する物価や雇用指標は好調だ。11日に発表された7月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比5.4%の上昇だった。7月の雇用統計は非農業部門雇用者数が94万3000人増加した。オフィスFUKAYAコンサルティングの深谷幸司代表は「FRBの目標は中長期的に達成に向かっている」と話す。
円ドル相場は年末にかけて1ドル=108~112円のボックス圏で推移するとの見方が多かった。足元では1ドル=110円近辺で推移しており、上下2円程度の変動となる。デルタ株の感染拡大が懸念されるものの「回復傾向にある経済指標が相場を下支えする」(深谷氏)という。
調査は8月10~11日に実施した。金融機関や事業会社の外為市場関係者70人が回答した。