QUICKと日経ヴェリタスが共同で実施した9月の月次調査<外為>で、市場参加者にバイデン米大統領の支持率低下によるドル相場の影響を聞いたところ、「ドル安になる」との回答が5割になった。政権の求心力が落ちてインフラ投資法案などの経済対策が滞れば米経済への懸念が高まるためだ。日本では衆議院選挙で現与党である自民党と公明党が過半数を割れば、円相場が動き出すと予想している。
アフガニスタンからの米軍撤退やコロナ対応をめぐり、バイデン氏の支持率は失速している。米民主党の中道派が共和党と超党派で合意した1兆ドルのインフラ投資法案は9月27日までに採決される見込みだが、民主党内では中道派と左派の意見が対立し予断を許さない状況だ。
調査では、法案審議が停滞すればドル安になるとの見方が最も多かった。クレディ・アグリコル銀行の斎藤裕司氏は「インフラ投資法案が成立すれば米国債が増発され、金利上昇でドル高になりそうだ。成立が滞ればドル安になる」と指摘する。
日本もトップの求心力が低下し菅義偉首相が退陣を決めた。自民党の総裁選は4候補が争う展開となり、9月29日に投開票となる。自民党は新たな総裁のもと、11月までに実施される衆議院総選挙に臨む。総選挙の結果について聞いたところ、29%が「自民単独で過半数」、63%が「自民と公明で過半数」を予想し、9割以上が政権の大枠は変わらないとみていた。その場合、円相場への影響は限定的だ。
仮に自公が敗北して過半数を割りこめば円相場は反応すると見ているが、その先の予想は分かれた。39%が円高、36%が円安との見立てだ。短期的な円高を予想するクレディ・アグリコルの斎藤氏は「金融緩和の実効性が疑われるため」と話す。
一方でオフィスFUKAYAコンサルティングの深谷幸司代表は「政権が不安定になれば円安」とみていた。「日本の政権交代が世界的なリスクオフ要因となって円高に傾く、とは考えにくい」(深谷氏)という。
調査は9月6~8日に実施した。金融機関や事業会社の外為市場関係者84人が回答した。