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仕組み債は「債券だから安全?」 資産形成に関する意識調査①

記事公開日 2023/1/23 15:00 最終更新日 2023/1/24 08:26 資産運用・資産形成 投資信託 データで読む 資産運用研究所 データで読む

QUICK資産運用研究所は2022年11月、「個人の資産形成に関する意識調査」を実施した。個人に資産形成の取り組み状況などを聞く調査は7回目となり、全国の5075人から回答を得た。今回は金融庁が監視を強めている「仕組み債」をテーマのひとつに取り上げ、仕組み債の保有者・保有経験者に対して商品性への理解度や運用成果、今後も投資する意向があるかどうかなどについて質問した。

仕組み債はオプション取引などの金融派生商品(デリバティブ)を使い、国債や社債より高い利回りを設定している金融商品。分類上は安全資産のイメージがある「債券」だが、条件次第では大きく元本割れする場合があり、思わぬ損失を負った投資家からの苦情が増えていた。証券会社や銀行などでは販売を停止する動きも出ている。

今回調査の回答者5075人に仕組み債の保有状況を聞いたところ、現在保有している人は78人(全体の1.5%)、過去に保有していた経験者(現在未保有)は135人(同2.7%)で、合わせて213人(同4.2%)にとどまった。

投資経験別に分けてみると、投資経験10年以上の「ベテラン」が最多の72人。投資経験5~10年の「上級」が35人、投資経験1~5年の「中級」が57人だった。玄人(くろうと)向きといわれる仕組み債だが、投資経験が1年未満の「初級」(「投資経験なし」の回答者も含む)も49人と保有者・保有経験者全体の4分の1近くを占めた。

年代別では幅広く分散しており、213人のうち60代が52人で最も多かった。そのほかの年代は、若いほうから18~29歳が33人、30代が34人、40代が34人、50代が38人、70~74歳が22人だった。

どんな金融商品を利用したいと思っているのかを集計してみると、仕組み債の保有者・保有経験者でも「元本割れの可能性が絶対にない商品」(22.1%)、「元本割れの可能性が少ない商品」(35.2%)との回答合計が57.3%にのぼった。仕組み債を保有したことがない人も含めた全体の数値(74.2%)より少ないものの、元本確保を優先する保守的な投資家が半数以上を占めている。

仕組み債の購入理由では、「利回りの高さに魅力を感じたから」が52.6%で最も多い。「債券なので、株式など他の資産と比べて、リスクが小さく安全そうだと思ったから」が32.4%で続いた。条件次第で大損する可能性がある仕組み債を「債券だから安全そう」という間違ったイメージで購入している人が少なくないようだ。

「債券だから安全」という理由で仕組み債を購入した人の投資経験別の割合は、「中級」と「上級」のレベルでいずれも4割を超えた。ある程度の投資経験があっても、仕組み債の商品性を正しく理解しないで買っている人が多いと推察される。一方、「自分の相場観にあった仕組み(商品の特性やリスク)だったから」が22.1%と、納得ずくで仕組み債を購入しているケースも確認できた。

現在保有している・過去に保有経験のある仕組み債の種類は「株価指数連動債(リンク債)」が46.5%、「EB債(他社株転換社債)」が34.3%、「為替連動債」が23.0%だった。この3種類は連動する株価や為替相場の変動により元本を大きく割り込むリスクがある。これに対し、早期償還される可能性はあるものの、発行体が破たんしなければ元本が守られる「コーラブル債」は5.6%にとどまった。また、「種類はわからない」の回答が23.0%だった。

仕組み債の保有者・保有経験者はその特性をどれくらい理解しているか、以下の5つの設問についての理解度を答えてもらった。①通常の債券よりリスクが高く、元本割れの可能性があること、②金利以外の要因(株価や為替など)が運用結果に大きく影響すること、③ノックイン・ノックアウトがあること、④販売価格に手数料が含まれていること、⑤流動性に乏しく、中途売却が難しいこと。

5問とも「十分に理解している」「ある程度理解している」の回答合計が大半を占めた。理解している人の割合が最も高かったのは、①の「通常の債券よりリスクが高く、元本割れの可能性があること」で80.3%、最低は④の「販売価格に手数料が含まれていること」の73.2%だった。

より重要なのは、こうした特性について、各項目で約2割が「どちらとも言えない」「あまり理解していない」「まったく理解していない」と回答したことだ。顧客が商品性やリスクの大きさをよく理解しないで買ったり、販売員が十分に説明しないまま売ったりしている可能性がうかがえる。

投資経験別では、各項目とも経験が長いほど理解度がおおむね高くなる傾向が確認できた。仕組み債を取り扱う金融機関は、どのような顧客に向けて販売するのかを慎重に検証する必要がありそうだ。

仕組み債について販売員から十分な説明があったかどうかは、「十分な説明があった」との回答が全体の46.0%と半分以下にとどまった。「説明はあったが、十分ではなかった」が同32.4%、「説明はなかった」と「わからない、覚えていない」の回答がそれぞれ同10.8%だった。

投資経験別に分けてみると、経験が長いほど「十分な説明があった」と感じる割合が増える傾向にある。これは販売員が同じような説明をした場合でも、顧客の投資経験によって十分に伝わっていたり、そうでなかったりするからだと考えられる。仕組み債に限ったことではないが、投資経験の浅い顧客にはより丁寧で具体的な説明が求められる。

仕組み債の運用結果については、運用益を得られたのが213人中の151人と7割を超えた。内訳は「損益を被ったことがなく、運用益が得られた」が78人(36.6%)、「損失を被ったことはあるが、トータルでは運用益となった」が73人(34.3%)だった。

今後も仕組み債に投資したいかどうかを聞いてみると、「投資したい」が4割超(86人)、「どちらとも言えない」が3割強(65人)、「投資したくない」が3割弱(62人)に分かれた。運用結果別に分けてみると、運用益を得られた人は続けたい意欲が高いという妥当な結果になった。

=②に続く

QUICK資産運用研究所が2022年11月に実施した「個人の資産形成に関する意識調査」の集計結果は、「QUICK Money World」で順次配信していく。調査概要などは以下のとおり。なお、今回調査から対象年齢を18~74歳とし、前回まで20歳以上としていた下限を引き下げた。

<調査概要>
調査期間 2022年11月25日(金)~30日(水)
調査対象 全国の18~74歳の個人
国勢調査の結果に準じて性別×年代別×地域別(8区分)の構成比率を割付け
回答者数 5075人
調査方法 インターネット調査
調査会社 日経リサーチ

◇本調査における回答者の区分
【投資経験】投資経験がどれくらいか聞いたもの(自己判断による)
・投資経験なし
・初級    :投資経験1年未満
・中級    :投資経験1年以上5年未満
・上級    :投資経験5年以上10年未満
・ベテラン     :投資経験10年以上

【資産形成状況】
・資産形成をしている人:下記の金融商品のうち、どれかを保有していると答えた人
・資産形成をしていない人:上記以外

外貨預金/国内株式/外国株式/個人向け国債/仕組み債(EB債、株価指数リンク債など)/その他債券 /投資信託(ETF、ETN、REIT、商品ファンド含む)※米株価指数に連動するレバレッジ型投資信託を除く/米株価指数に連動するレバレッジ型投資信託(レバナスなど)/ラップ口座(ファンドラップ、SMAなど)/投資一任型のロボアドバイザー/個人年金保険(円建て)※公的年金、企業年金は除く/個人年金保険(外貨建て)/定期保険・養老保険(円建て)/定期保険・養老保険(外貨建て)/終身保険(円建て)/終身保険(外貨建て)/外国為替証拠金(FX)取引、差金決済(CFD)取引/先物・オプション商品、カバードワラント/暗号資産(仮想通貨:ビットコインなど)/金などの貴金属投資

 


著者名

QUICK資産運用研究所 西本 ゆき

著者名

QUICK資産運用研究所 西田 玲子


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