老後資金の不安を和らげるには、若いころからの備えが必要になる。QUICK資産運用研究所が2022年11月に実施した「個人の資産形成に関する意識調査」で、公的資金だけで老後資金をまかなえないと考えている人を対象にどのように準備するかを複数回答で聞いたところ、「コツコツためる」が首位の60.1%だった。過去にさかのぼって比較できる2019年調査以降、この回答がずっと首位を維持している。2番目に多かったのは「働いて稼ぎ続ける」の36.4%だった。
じりじり増えているのは、「現役時代から資産運用で増やす」の回答。19年調査で21.6%だったのが、今回調査では30.9%と初めて3割を超えた。順位も「退職金・企業年金」を初めて追い抜き、3位につけた。
「現役時代から資産運用で増やす」の回答割合を年代別にみると、まさに現役世代に当たる30代(42.8%)、18~29歳(37.6%)、40代(37.1%)の多さが際立った。50代(26.1%)も含め、これらの年代は19年調査から上昇が続いている.
「コツコツためる派」の広がりは、投資信託の買い方の変化にも表れている。投資信託を保有している人を対象に、積み立てで購入しているか、一括で購入しているかを質問したところ、「積み立てのみ」の回答が40.1%を占めた。前回調査(32.3%)から7.8ポイント増え、比較可能な18年調査以降で初めて「一括投資のみ」(34.5%)を上回った。
「一括投資のみ」は前回調査(40.7%)から6.2ポイントの低下。18年調査からずっと下がり続けている。積み立て投資と一括投資の「両方」という回答は、前回(27.0%)より1.7ポイント低い25.3%だった。
投資信託をどの口座で積み立てているかの質問では、「一般・つみたてNISA(少額投資非課税制度)」の回答が75.2%で最多だった。18年調査から上昇が続いている。「特定・一般口座」が41.9%で2番目だった。
NISA制度は2024年から大幅に拡充される。投資枠の拡大や非課税期間の恒久化に加え、「つみたて」と「一般」に分かれている制度が一本化され併用できるようになるなど、使い勝手が格段によくなる見通し。新制度に移行するまでの残り1年、金融機関は顧客本位の販売体制づくりが重要課題のひとつになりそうだ。
今回調査を実施した22年11月下旬時点で、NISAを「利用している」と答えた人は「つみたて」が13.0%、「一般」が16.6%だった。これらの数値の留意点は、「現在利用しているかどうか」を特定して聞いていないため、過去に一般・つみたてのどちらかを利用していた場合など一部が「利用している」にカウントされていることだ。
NISAの利用状況を主な職業別に分けてみると、会社員(金融業)は「つみたて」が22.5%、「一般」が18.8%だった。どちらも全体の平均を上回ったものの、同じ会社員で非金融業の20.1%、18.6%と比べ大差はない。
職業別のつみたてNISAの利用状況について18年調査以降の推移をみると、会社員(金融業)がトップになったのは前回21年調査が初めて。つみたてNISAは18年1月に始まったが、金融業の会社員でもしばらく利用率が低迷していたことがわかる。24年に新しいNISAがスタートすれば、これまで投資をしたことのない人たちの制度利用が増える見込み。金融業界内にも大きな開拓余地があり、利用の底上げを狙えることが今回の集計でわかった。
=おわり
QUICK資産運用研究所が2022年11月に実施した「個人の資産形成に関する意識調査」の集計結果は、「QUICK Money World」で順次配信していく。調査概要などは以下のとおり。なお、今回調査から対象年齢を18~74歳とし、前回まで20歳以上としていた下限を引き下げた。 <調査概要> ◇本調査における回答者の区分 |