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ヘルスケア株の特徴とは? ディフェンシブ株としての魅力に加え、成長性の高さにも注目!

記事公開日 2024/11/21 16:30 最終更新日 2024/11/21 16:30 経済・ビジネス コラム・インタビュー 市場用語再点検 金融コラム

【QUICK Money World 辰巳 華世】ヘルスケア株が注目されています。高齢化社会を背景にヘルスケア産業の拡大が予想されているためです。今回はヘルスケア株について、基本的な説明や特徴、ヘルスケア株が関心を集める理由に加えて、注目銘柄や今後の見通しについても紹介します。

ヘルスケア株とは?

ヘルスケア株が指す範囲は、医薬品をはじめ、医療機器、医療サービス、医療保険、製薬やバイオテクノロジーなど幅広い領域の銘柄に及びます。ヘルスケア株の種類はいろいろありますが、その多くは私たちの生活に密着した分野です。なぜなら、ヘルスケア産業は健康に関係した産業だからです。

特に人生100年時代を迎えた現代社会では、ヘルスケアは欠かせない産業です。高齢化が加速し、世界の先進国では平均寿命が伸びています。長生きすればそれだけ病気の予防や治療、介護など日常生活でヘルスケアが重要なものとなります。

実際、ヘルスケア関連の市場規模は拡大しています。2024年3月に経済産業省が公表した資料によると、23年の医療機器産業の世界での売上高は5176億ドルで、先進国の高齢化や新興国の人口増加・経済発展などに伴い27年までに約6543億ドルに成長すると見込まれています。(出典:経済産業省「医療機器産業ビジョン 2024」

ヘルスケア産業では特に米国がリードしています。医療機器産業の各国の売上高では、米国が40%を超えるシェアを占めています。米国ではS&P500種株価指数のうち、ヘルスケアが2番目に大きなセクターとなっています。

GDP(国内総生産)に占める医療費の割合も大きいです。米国保健福祉省のメディケア・メディケイドセンター(CMS)によると、2022年のGDPに占める国民医療費の割合は17.3%、1人当たり医療費は1万3,493ドルでした。米国の国民医療費の対GDP比と1人当たり医療費はともにOECD加盟国の中で1位で、診察費など医療費の高さが指摘されています。

日本はGDPに占める国民医療費の割合は先進国の中では低めではありますが、医療費は年々増加しています。厚生労働省の「令和4(2022)年度 国民医療費の概況」によると22年度の日本の医療費は46兆6,967億円で、10年前との比較で約19%増、20年前との比較で約51%増となっています。

この様にヘルスケア産業は、市場規模が大きく生きていく上で欠かせない分野が多いこともあり常に一定の需要に支えられています。そのため、業績が安定しやすいほか、時価総額が大きい大企業も多くあります。 

 

ヘルスケア株が注目される理由

ヘルスケア株が注目される理由は、今後の市場規模の拡大が見込まれるためです。世界的に平均寿命が伸び高齢化が進む中、需要が増加しています。最新のテクノロジーや新薬の開発など、医療が高度化することで一段の成長も見込めます。

また、景気に左右されないディフェンシブ性も魅力です。健康にまつわる分野が多いため常に一定の需要があり、景気が悪くても医療支出は削減しにくい傾向があります。

景気は好景気と不況を交互に繰り返す傾向があります。株式相場にとって好景気は追い風となりますが、不景気は相場を冷やす材料となります。ただ、不景気だからといって全ての銘柄が不調になるわけではなく、不景気の時に注目される銘柄や業種があります。

株式市場ではその時々の景気の動きにともなって物色されやすい業種が変わります。これを景気循環とセクターローテーションと言います。一般的に景気が減速し始める初期から景気減速の後期にかけて、エネルギー分野や生活必需品、ヘルスケア産業や公益事業が物色されやすい傾向があります。

景気循環とセクターローテーション

ヘルスケア株は、領域が広いです。サービス業、製造業、生産業など幅広い業種が対象に入ります。例えば、製薬分野で見ても、大手製薬会社もあれば、新薬の研究開発などを手掛けるベンチャー企業まであり、大型株から中小型株まで企業規模もさまざまです。大手製薬会社など大型株は安定した配当など株主還元が手厚いのに対して、新薬開発などのバイオテクノロジー株は業績が不安定で成長株の側面が強い傾向があります。

ヘルスケア株はこれまで何度も株式相場で注目を集めてきました。記憶に新しいところだと、新型コロナウイルス感染症に関するワクチン関連の株式が注目を集めました。米製薬大手のファイザー、米モデルナなどみなさんもコロナ禍で良く聞いた名前だと思います。

ファイザーやモデルナの株価は、コロナに対するワクチンを開発したことで20年後半から21年にかけて株価が大きく上昇しました。

■ファイザーの株価チャート(2018年1月~2024年10月)

■モデルナの株価チャート(2018年12月~2024年10月)

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注目のヘルスケア株

ここでは日米の注目のヘルスケア株についていくつか紹介します。

米国のヘルスケア株

ユナイテッドヘルス

米国の大手保険や医療関連の企業で、医療保険や医療サービスを手掛けています。傘下の「ユナイテッド・ヘルスケア」は、雇用主・消費者向けの医療保険、「メディケア・アドバンテージ」など高齢者向けの医療保険、低所得者向け「メディケイド」関連の州政府プログラムを通じた医療保険などを扱っています。一方で、他の傘下企業ではITを活用した医療サービスを提供しています。医療サービス部門の拡充のためM&Aも積極的です。

J&J

傘下企業を通じ、世界各地でヘルスケア製品の開発、生産、販売をしています。主力の医薬品事業では乾癬治療薬「ステラーラ」や抗がん剤「ダラザレックス」などが主力です。23年5月には消費者向け製品事業を分離上場し、医薬品・医療機器事業に注力する姿勢を示しました。株主還元を重視しており、24年まで62年連続で増配しています。

イーライ・リリー

医薬品の開発・製造を手掛け、世界100カ国超で販売しています。米インディアナポリスに主要研究開発施設を置き、米国ほか海外各国にも生産・流通拠点を構えています。インシュリンの実用化に世界で初めて成功。ヒト向け医薬品では、糖尿病など内分泌関連、腫瘍関連、免疫疾患関連、神経科学関連などを手掛けています。肥満症治療薬で大きなシェアを握っていることでも知られます。スピンオフやM&Aを実施しています。

 

日本のヘルスケア株

第一三共(4568)

日本の製薬会社で、医薬品の研究・開発、製造・販売を主な事業としています。主力の抗がん剤の販売が米国や欧州を中心に国内外で好調です。23年、日本企業としては初めて新型コロナウイルスに対応するワクチンの製造販売承認を取得しました。

中外製薬(4519)

スイスのロシュ傘下の製薬大手。がん領域など新薬候補が充実しています。がんの研究や診断、治療に関わる医学分野であるオンコロジー領域が強みです。抗がん剤や血友病治療薬などが主力商品です。

武田薬品工業(4502)

日本の大手製薬会社であり、医薬品の研究・開発、製造・販売を中心に幅広い医療分野で活動しています。海外売上高比率も高いです。がんや中枢神経、消化器など幅広い分野に注力しています。

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ヘルスケア株の今後の見通し

ヘルスケア株は今後も注目を集めそうです。先進国の高齢化に伴い、今後も医療支出は拡大する見込みです。また、新興国の人口増加と所得水準の向上により新興国でも医療支出が拡大する方向です。バイオ医薬品の発展も注目されます。新型コロナウイルスなど感染症に対するワクチンやがんに対する免疫治療薬、糖尿病治療薬などの難治療分野でのバイオ医薬品の発展が期待されています。

ヘルスケア株の投資の注意点

ヘルスケア株は、大型株から中小型株まで企業規模もさまざまで、成長性が高い株や、ディフェンシブ性が高い株など種類があります。ヘルスケア株に投資をする際にはそれぞれが持つ特徴に気をつける必要があります。

例えば、ヘルスケア株でよく見られる例として、政府の規制や損害賠償といったネガティブなニュースに株価が大きく左右される傾向があります。

また、新薬開発にはリスクが付きものです。新薬を開発すると発表したからと言って必ず成功するものではありません。新薬は長い間研究し、成分の有効性や安全性の確認ができた後に国の承認を受けて発売することができます。

一般的に日本で新薬を開発するのに必要な期間は9年から16年と言われており、多額の費用も必要です。製薬協ガイド2023によると、新薬の開発成功率は約2万5000分の1と言われています。それだけ時間とお金を費やしても、失敗に終わる可能性が大いにあるということです。新薬の見通しについて予測することは難しく、株式アナリストによる新薬の売り上げ予想についても、上振れと下振れのどちらの可能性も考えられます。

まとめ

ヘルスケア株は、健康にまつわる産業で幅広い業種があります。高齢化社会の中で、今後も成長が期待される身近な産業の一つです。大型株から中小型株、成長株からディフェンシブ性が高い株などさまざまなタイプの銘柄があります。今後が期待されるヘルスケア株に注目してみましょう。

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著者名

QUICK Money World 辰巳 華世

2003年にQUICKに入社後、15年間勤務。約5年にわたり日本経済新聞社、日経QUICKニュース社(NQN)にて記者職に就く。QUICK退社後、フリーランスライターとして2020年より「QUICK Money World」に寄稿。


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