日経平均株価が26年ぶりの高値水準で推移するなど、株式相場の勢いが途切れないなかにあってネット証券の経営にも追い風が吹いている。中でもSBIホールディングス(8473)は傘下のSBI証券でホールセール業務の拡大を進めるほか、仮想通貨ビジネスにも進出するなど新事業領域の開拓を進めている。同社の北尾吉孝社長に今後の事業展開に加え、相場の見通しを聞いた。
引受業務などホールセールで攻勢へ
――リテール業務を中心に強みを発揮していますが、ホールセール業務でもSBI証券は存在感を出しはじめている印象を受けます。今後の事業の方向性について、どのように考えていますか。
「リテール分野で当社のシェアは上半期において35%程度と圧倒的だ。当然の戦略として、次はホールセール分野をさらに攻め込むことになる。同分野でのメーンビジネスが引受業務だ。新規公開(IPO)から始まり、セカンダリーも含めた引受業務の拡充を進めていく方針だ。併せて債券引受等の体制強化のため事業法人部、金融法人部の充実化も進める。SBI証券の販売力を考えれば、政府の売り出しを引き受ける余力も十分にある」
「地方の資産形成需要に応えるため、地方銀行に金融商品仲介サービスも提供しはじめている。すでに清水銀行や愛媛銀行に提供しているが、年内にサービス提供先は10行弱にまで増えるだろう。2018年3月末には25行~30行まで増加する見通しだ」
――最近は仮想通貨事業にも力を入れています。
「年明けの出来るだけ早いタイミングで仮想通貨取引所を開設し、ビットコインなどの取引サービスを開始しようと考えている。これまで膨大な取引量に耐えうるシステムや、ウォレット(電子財布)の安全性が課題になっていたため少し様子を見ていたが、解決のメドがたった」
「特に取引システムについては、このたび資本業務提携について基本合意した中国の仮想通貨取引所大手Huobi(フオビー)グループのものを導入する。フオビ―は165万口座を有する仮想通貨取引所を長年運営してきた実績があるため、取引が一気に集中したときでも安心だ。SBIグループの圧倒的な顧客基盤を踏まえれば、慌てずにしっかりと環境を整備してから開業すればいいと考えていた」
――日経平均株価が依然、高値圏で推移しています。見通しは。
「急ピッチで上昇してきたため、調整が入っても不思議ではないが、米国では大幅な法人税率の引き下げが実現しそうで、同国の経済成長率を押し上げていくと予想される。内容の良し悪しはどうあれ、トランプ米大統領ほど公約を忠実に実行しようとする国のトップは珍しい。パリ協定からの離脱やエルサレムをイスラエルの首都と認定するなど、あれだけ世界の反対を押し切ってまで普通なら断行しない。批判も多いが有言実行の大統領だとは言うことができる。米連邦準備理事会(FRB)は12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)に続いて18年も2~3回利上げするだろうが、政策期待が株価の支援材料になることもあり、マーケットへの影響は限定的だろう」
日本株に過熱感はまだない
「20年の東京オリンピック開催に向けた需要拡大が見込まれる国内についても、企業業績が大幅に向上しているだけでなく、設備投資も回復傾向をたどっている。今期の企業収益は2ケタ以上の伸びが見込まれるうえ、PER(株価収益率)が15倍前後であることから、日本株には過熱感はまだない。日経平均は年内に2万4000円を試すだろう。企業業績の上向きを背景に増配する企業が増えることなどを踏まえると、18年中に2万6000円台、うまくいけば2万7000円台に乗せる可能性も高いとみている」
「北朝鮮を巡る地政学リスクは18年にかけても続くだろう。しかし、いざ米国との間で本当に緊迫した状態になっても、軍事力の差から一過性のものになると考えられるため、特に心配していない。18年の日経平均の下値はせいぜい2万2000円近辺と予想している」
【コンテンツ編集グループ:内山佑輔、岩切清司】