10月に1655円(8.1%)上昇した日経平均株価。26年ぶりという歴史的高値圏を回復したのは外国人投資家による買いがけん引役だった。東京証券取引所の発表資料から地域別の動向をひも解くと、現物株で2兆円超を買い越し過去最高を記録した「欧州」の存在が際立つ。
グローバル金融市場の中心地の1つはロンドン。世界中の運用マネーが集まるため、結果的に欧州からのフローとして見える。ただ、QUICK FactSet Workstation(QFW)で改めて「株式会社ニッポン」の大株主を見ると、欧州の巨人が浮かび上がる。
QFWには運用機関ごとの株式保有のデータが収容されている。保有株数と10月末時点の株価を使って推定時価を算出。以下は本社所在地が海外の運用機関の日本株保有ランキングだ。
ノルウェーのSWFは日本でも大株主
ブラックロックやバンガード・グループといったインデックス型運用のウエートが大きい米系の次に位置したのがノルウェー政府年金基金だ。9月に公表した運用資産は初めて1兆㌦(約112兆円)を超え、世界最大の政府系ファンド(SWF)でもある。
16年末時点のデータであり銘柄を入れ替えている可能性があるものの、保有する日本株の上位にはトヨタ(7203)やソフトバンクG(9984)、三菱UFJ(8306)、キーエンス(6861)、三井住友(8316)、ファナック(6954)、ソニー(6758)が並ぶ。
21日付の日本経済新聞は市場関係者の話として同基金が10月に日本株の買いに動いたといった見方を伝えた。この月の上げ相場では日経平均がTOPIXを大きくアウトパフォームした姿が目立った。同基金の保有上位にあるソフトバンクGやキーエンス、ファナックはまさに日経平均の構成比率が高い、いわゆる「値がさ株」でもある。日経平均との連動性の高い銘柄を買っていたのか、気になるところだ。
任天堂の筆頭株主は世界有数の運用会社
キャピタル・グループはグローバル市場で有数の運用会社の1つ。特定の銘柄の保有額が大きく日本市場でもその名が知れわたる。QFWのデータでも、保有銘柄数は68にとどまり指数連動とは一線を画すアクティブ型運用の姿勢が浮かぶ。
投資する日本株の中でウエートが高いのが任天堂(7974)。自社株保有を除くとキャピタルが事実上の筆頭株主だ。QFWで確認できるデータでは、キャピタルは少なくとも1999年から任天堂へ投資を開始した。今年の任天堂株は家庭用ゲーム機「Nintendo Switch(ニンテンドースイッチ)」の好調な売れ行きを背景に株価が急騰。昨年末からの上昇率は82%となっている。キャピタルの運用成績に大きく貢献したことは間違いなさそうだ。
2つの「フィデリティ」のナゼ
ランキングには2つの「フィデリティ」が並ぶ。世界の運用会社として耳にする会社名だが、この2つはまったくの別法人。FMRは「フィデリティ・マネジメント・アンド・リサーチ」の略で主に米国の投資マネーを運用する。一方でFILは「フィデリティ・インターナショナル・リミテッド」で、米国以外の資産運用を手掛けている。
日本で投資信託を設定・運用しているのはFIL。FMRとは会計上の連結関係などにはないといい、あくまで経営が独立している。QUICK資産運用研究所の調べでは、国内の公募投信の運用資産残高ランキングで「フィデリティ」は約3兆3000億円で7位となっている。
欧州銀の保有は「業者玉」
日本株保有の上位にはドイツ銀行やUBSといったグローバルの金融機関も多い。しかし、日本株への純投資という目的ではないようだ。欧州系金融機関は日本で株価指数との裁定取引を積極的に手掛けている。格付けが相対的に高いこともあり低金利=低コストで資金調達が可能で、現物指数と先物価格との間に開くわずかなさや抜きで収益を稼いでいるとされる。
また、「ヘッジファンドなどが現物株を売買せず全ての取引をスワップとするトータル・リターン・スワップ(TRS)もあるのでは」(トレーダー)との指摘もあった。デリバティブ(金融派生商品)を利用したビジネスの原資産として保有する必要があり、欧州系の保有は「業者玉」と見た方がよさそうだ。