QUICKコメントチーム=根岸てるみ
キャッシュレスやあらゆるモノがインターネットにつながる「IoT」の浸透とともに、サイバー攻撃の脅威も広がっている。注目を集めようと大きなイベントを狙ってハッカーは攻撃をしかけてくる。東京オリンピックまで1年を切り、カリフォルニア州ではサイバーセキュリティーに関する法律の施行が来年1月に迫る。ここ最近の日米株式市場では関連銘柄がクローズアップされる機会が増えている。
先週の米株式市場では、セキュリティー対策ソフト開発のパロ・アルト・ネットワークスに買いが集まった。きっかけはゴールドマン・サックスが公表したセキュリティー・ソフトウエア関連7銘柄に関するレポートだった。この業界は景気動向に左右されず安定的な成長が期待できるとし、グローバルのセキュリティー市場は2018年の1240億ドルから2023年に1885億ドルに拡大すると試算。勝ち組企業としてパロ・アルト・ネットワークス、フォーティネット、ベリントシステムズの3銘柄を挙げた。なかでもフォーティネットは業績の急拡大を受けて株価も急伸。サイバーセキュリティー向けソリューションビジネスに強みを持ち、さらなる売り上げ増への期待が株価を押し上げている。
日本では東証マザーズ上場のCRI・ミドルウェア(3698)が話題になった。同社は12日、政府や電力といった重要インフラで使用されている高度な通信システムをIoT向けに利用した製品「Terafence Vsecure(テラフェンス ヴイセキュア)」を販売すると発表。サイバーセキュリティーの分野では先駆的といわれるイスラエルの企業と共同開発したもので、IoT向けに高度なシステムを利用したケースは世界初とCRIはいう。日立ハイテクノロジーズ(8036)などと提携し、3年以内に1000拠点以上に導入したいとしている。
民間調査によればサイバー犯罪は全世界で6000億ドル程度(世界のGDPの1%弱)に膨らんでおり、日本でも増加傾向にある。警視庁の資料によると、2018年のサイバー犯罪の検挙件数は9040件と過去最多を記録した。相談件数は12万6815件だった。
広がるサイバー犯罪を回避するため、米カリフォルニア州は法施行に動いた。来年1月からデバイスにセキュリティー機能の搭載を義務付けるもので、同様の動きは今後、全米に広がる可能性もある。
サイバーセキュリティーに投資する際は米国で高いシェアを持つ企業やグローバルで活躍する企業が選別基準の一つになりそう。ちなみにトレンドマイクロ(4704)は国内外で製品を販売しているほか、サイバーセキュリティー関連銘柄で構成した米ETF(ETFMG Prime Cyber Security ETF)にも組み入れられている。
ゴールドマンが指摘するように、こうしたご時世ではサイバーセキュリティー関連銘柄は景気に左右されにくい側面がありそう。テーマ株としてだけでなく、ディフェンシブ銘柄の一角にも位置付けられていく可能性がある。
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