【NQNロンドン 菊池亜矢】食品・日用品大手の英ユニリーバの株価が持ち直している。3月に年初来安値を付けた後は、世界的な高インフレや景気の減速懸念が広がるなか、景気動向に左右されにくいとされるディフェンシブ銘柄の代表格と言える同社株を物色する動きが強まった。英株式市場では足元で4100ペンスを上回り、年初来安値を2割超上回る。もっとも、大幅な値上げ継続による数量の落ち込みへの警戒感は強く、一段の上値追いには慎重な見方が出ている。
ユニリーバは2022年初め、英製薬大手グラクソ・スミスクライン(GSK)の一般用医薬品事業の買収計画を断念。事業成長への懸念が高まった。その後は、事業再編や人員削減で業績の立て直しを図り、ディフェンシブ株への選好の高まりも背景に株価は持ち直している。
10月下旬に発表した22年7~9月期決算で、売上高は事業買収や売却、為替の変動などを除いたベースで前年同期比10.6%増の158億ユーロだった。値上げが奏功し、5つの事業部門すべてで売り上げが増加した。インドやブラジル、トルコなどで衣料用洗剤が好調だった「ホームケア」事業や、猛暑が続いた欧州などで「アイスクリーム」事業が伸びた。
四半期ごとに価格上昇率をみると、1~3月期が前年同期比8.3%増、4~6月期は11.2%増、7~9月期は12.5%増と直近では2ケタの値上げが続く。一方、数量はそれぞれ1.0%減、2.1%減、1.6%減と、小幅な減少が続いている。
これまでは大幅な値上げに対して数量の落ち込みが小さく、同社の価格決定力とブランド力の高さを評価する声もある。半面、英HSBCは「今後、他社と比較した際の価格差がはっきりしてくるうえ、値上げによる影響がより大きくなる」として、22年後半から23年前半にかけては数量の大幅な減少が見込まれると指摘する。新興国事業の多くは非常に底堅いとしながらも「相場を大きく動かす材料が見当たらず、株価が好調に推移することは難しい」(HSBC)とみていた。