日経QUICKニュース(NQN)=尾崎也弥
26日の東京株式市場でうどん店「丸亀製麺」のトリドールホールディングス(3397)が急伸し、一時は前日比11%高の1509円と、およそ半年ぶりの高値(株式分割考慮ベース)を付けた。大幅な赤字や店舗閉鎖に追い込まれる外食チェーンが目立つなか、トリドールの業績を手堅いとみた買いが入った。半面、今後の成長を占う持ち帰り戦略には慎重な見方もある。
■「コロナの影響は相対的に小さい」
25日に発表した2021年3月期の業績見通しは、連結最終損益(国際会計基準)が7億円の赤字(前期は19億円の黒字)だった。新型コロナウイルスの感染拡大による客足減などの影響はおおむね上半期までで、その後は徐々に回復すると想定している。
赤字予想だが「苦戦の外食業界で、ランチ利用やロードサイド店も多い丸亀製麺は居酒屋などの業態と比べコロナの影響は相対的に小さい」(岩井コスモ証券の清水範一アナリスト)。年間配当予想を前期と同じ6.25円(株式分割考慮後)にするのも安心感につながった。
■全店でうどんの持ち帰りを展開予定
ただ、コロナによって食べ物を持ち帰る風潮が広がるなか、丸亀製麺はテレビCMなどで強調していた「できたてアピール」の方向転換を迫られた。5月7日からは「コロナ対策をしっかりしているブランド」を訴えるCMに切り替えている。
27日からは全店でうどんの持ち帰りを展開する予定。持ち帰り専用容器を使って鮮度を保つ工夫をするが「店でできたての食感を楽しむ人が多かったため、どこまでニーズを取り込めるか読み切れない」(岩井コスモ証券の清水氏)。
うどんの本場、香川県ではゆでてしばらく時間が経過したうどんを客に出す店は少ない。
持ち帰りは牛丼チェーンやマクドナルドが確固たる地位を築き、最近では他の飲食チェーンとの競争も激しい。トリドールの勝算は未知数で、株価は買い一巡後に伸び悩み、下げに転じる場面もあった。
■外食株の逆襲は短命?
きょうは「ポール・ボキューズ」などを展開するひらまつ(2764)や「いきなり!ステーキ」のペッパーフードサービス(3053)も東証1部の値上がり率ランキングの上位に顔を出した。

※ひらまつとペッパーフードサービスの株価
「全国的な休業要請はもうないだろうという目算から買われたが、席の間隔をあけたり、消毒を徹底したりするとコストが増し、これまでのように収益をあげるのは難しくなる」(ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジスト)。トリドール株も朝高後は失速し、25日終値は1354円と前日比6円(0.4%)安になった。
コロナ時代の経済、社会の姿はなお定まらず、外食業界も手探りだ。外食株の逆襲は短命かもしれない。
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