国際商品市場で銅先物が堅調だ。6月25日はロンドン金属取引所(LME)で指標となる3カ月物が一時、1トン5900ドル台まで上げ、3月の安値から2割以上、上昇した。米国などで新型コロナウイルスの感染が再び拡大しているのを受け、景気持ち直しの勢いが鈍る懸念があるが、各国政府の財政支出が長期的な銅の需要増につながるとの思惑が強まっている。
※LME銅3カ月先物の推移、2020年後半までに6500ドルまで上昇と分析■6500ドルまで上昇と分析
「環境とデジタル分野の財政支出が銅ブームにつながる」。米調査会社ユーラシア・グループのハニング・グロイスティン氏は今週、リポートでこう指摘した。
銅需要の増加や価格上昇を見込むのはユーラシアだけではない。バンク・オブ・アメリカは各国の緩和的な金融政策や財政支出の増加を背景に、2020年後半までに銅価格は1トン6500ドルまで上昇すると予測する。
■環境対策やデジタル分野を優先
新型コロナのまん延で、2020年の世界景気は大きく落ち込む見通しだ。国際通貨基金(IMF)は世界経済の20年の成長率をマイナス4.9%と予測する。先進国と新興国がそろって景気後退に陥る見通しで、景気に連動しやすい銅需要は本来なら落ち込むはずだ。しかし、「ドクター・カッパー(Copper=銅)」は、その先を読む。
欧州やアジアの一部の国は、景気刺激策の一環として環境対策やデジタル分野に優先して資金を回す傾向を強めている。ドイツはガソリン車やディーゼル車などの内燃機関車を購入補助の対象から外し、電気自動車(EV)の購入者に補助金を出す。フランスも自動車業界の支援策のうち一定割合をEV購入の補助に充てる。EVの1台あたりの銅の使用量はガソリン車などよりも多く、EVが普及すれば銅の需要増につながる。
米国のトランプ政権が打ち出すインフラ投資にも、次世代通信規格「5G」に対応したブロードバンド網の整備が盛り込まれた。ユーラシアのグロイスティン氏は「環境やデジタル分野、特に電気自動車や5G関連のネットワーク、再生可能エネルギー分野への巨額投資は、大量の銅を必要とする」と指摘。銅の需要は20年に前年比で減少するが、21年に持ち直し始め、30年まで緩やかに増加が続くとみる。
足元ではブラジルやインドで感染者拡大が続く。米国でも再び一部の州で感染者が増加しており、経済再開の動きを妨げている。ただ、景気の先行きが怪しくなればなるほど財政支出や中央銀行の資金供給への圧力が強まり、銅価格を押し上げることになる。(NQNニューヨーク 岩本貴子)