7月24日、米テキサス州ヒューストンにある中国領事館が閉鎖された。中国政府は27日、在ヒューストンの領事館が閉鎖されたことを受けて、成都にある米総領事館を正式に閉鎖した。23日、ポンペオ米国務長官はニクソン大統領記念館で行った演説で、対中強硬路線を鮮明にするなど、米中間の対立は「新冷戦」の様相を強めている。新型コロナウイルスに加え市場では大きな不透明要因になるだけに、様々なシナリオが交錯し始めた。
■米中対立激化は米中日株のネガティブ要因に
みずほ証券は28日付リポートで、トランプ米政権が20日に新疆ウイグル自治区の人権侵害などを理由に中国企業11社をエンティティリストに追加したと発表したことから、「トランプ政権は制裁措置の一環として、中国の有数な企業のエンティティリストへの段階的追加を今後も打ち出す可能性が高い」と指摘。中国企業が米企業と取引制限に追い込まれることで、部品や素材などの調達先が確保できず、生産中止に追い込まれるリスクがあるとの見方を示した。
みずほ証券はサプライチェーンの混乱が生じると、中国以外の企業にも影響を及ぼす可能性があると指摘。「米中経済の緊張激化とサプライチェーンの混乱は、米中日株式市場のネガティブ・リスクファクターになろう」との見方を示している。
■バイデン政権で深刻化するリスク
大和証券も同日付リポートで、対中国関連法案はほとんど超党派で、多数の民主党議員の多数の賛成を受けて可決されていることから、11月の米大統領選において民主党のバイデン候補が優位という見方が広がっている中で、「もしバイデン政権が成立した場合も、米中対立は継続または一段と深刻化するリスクがあろう」と指摘した。
米中対立が深化した場合には、米中間の貿易が減少し、経済措置の先行き不透明感から設備投資が減少、米中とその周辺地域の景気が共に悪化し、日本企業の提供する財やサービスへの需要が減少するという経路で日本株に影響を与えるとみている。
■アウトパフォームする可能性が高い企業
このような影響下で、「アジアと北米地域での売上高割合が大きい企業がアンダーパフォームし、同地域への売上高割合が小さく国内の安定した需要へのエクスポージャーが大きい企業がアウトパフォームする可能性が相対的に高い」との見解を示した。
2019年にトランプ大統領による対中制裁関税引き上げ表明等により、日本株が大きく下落したのは次の2期間、①19年4月27日から同年6月3日まで、②同年8月1日から同年8月26日までであった。「この2期間にTOPIXをアンダーパフォームした企業群のアジア・北米地域売上高割合はアウトパフォームした企業群を上回る傾向がみられた」という。以下に銘柄を一部抜粋。
・2019年の米中対立深刻化時にアウトパフォームしたTOPIX500採用企業
コード | 銘柄名 |
2815 | アリアケ |
9684 | スクエニHD |
9861 | 吉野家HD |
3626 | TIS |
4681 | リゾートトラス |
8282 | ケーズHD |
1925 | 大和ハウス |
4661 | OLC |
・2019年の米中対立深刻化時にアンダーパフォームしたTOPIX500採用企業
コード | 銘柄名 |
5803 | フジクラ |
5406 | 神戸鋼 |
6976 | 太陽誘電 |
6753 | シャープ |
4202 | ダイセル |
6770 | アルプスアル |
5706 | 三井金 |
5991 | ニッパツ |
(QUICK Market Eyes 大野弘貴、川口究)