JPモルガン証券は8月24日付の日本株ストラテジーリポートで、「安倍首相の健康不安説再燃や内閣支持率の低迷を受けて、一部で安倍首相が来年9月末の自民党総裁任期切れを待たずして辞任するのではないかとの観測が広がっている」との背景を示した上で、「我々はもとより、安倍首相の辞任を秋口以降の日本株のリスク要因と維持づけていたが、そのがい然性が従来よりも高まっているのが現状」との見方を示した。
■退陣タイミングとリスク
同社は今後について、(1)衆院の任期切れまでに安倍首相が解散・総選挙を実施し、結果次第で自民党総裁の任期を延長する、(2)解散・総選挙を実施せずに、自民党総裁の任期切れまで総理を務め、後任の自民党総裁が新総理となった上で、衆院選挙が実施される、(3)安倍首相が自民党総裁の任期切れまでに辞任し、新しい総理・総裁の下で衆院選挙が実施される、との各シナリオを掲示した。
その上で、内閣支持率が低下傾向にある点や安倍首相に健康問題が浮上している点を踏まえると、(1)の可能性は事実上かなり低く、(2)の可能性では、任期切れが迫る中で政策の実行力が低下し、政権がレームダック化するリスクが大きいとの見方も示されてる。
これらを踏まえ、(3)の退陣シナリオが浮上するものの、今年中の早期退陣になるか否かは「安倍総理の健康状態やコロナ禍の影響がある程度落ち着くかどうか等に影響される」とした。一方、21年には1~3月に通常国会での予算審議、7~8月に東京オリンピックが予定されていることから、「年内の比較的早いタイミングで安倍内閣が退陣するリスクに、相応の注意を払う必要がある」との考えも示されている。
JPモルガン証券は、「現時点で誰が後継総理・総裁になるかを予測するのは困難」としつつも、「少なくとも安倍内閣退陣に対する株式市場の初動は日本株売り圧力が強まることが想定される」とのビューを示した。この場合の下値目途として、日経平均株価で2万500~2万1000円程度と想定している。
(QUICK Market Eyes 大野弘貴)