コロナショックに見舞われても運用成績を伸ばし、その成果を投資家に分配金で還元している投資信託がある。元本を取り崩さずに運用益から分配金を出し、高い分配金利回りを上げているファンドをランキングしてみた。
■米国株式で運用するタイプが上位に
対象は国内公募追加型株式投信のうち、今年7月末まで過去3年の分配金をすべて運用成果から支払った「分配金健全度100%」のファンド。投信の分配金には運用益から出す「普通分配金」と、元本の一部を取り崩す「特別分配金(元本払戻金)」の2種類があり、3年の分配金健全度の数値は、3年前にその投信を購入した投資家が受け取った分配金のうち普通分配金が占める割合を示している。
この中で分配金利回りが最も高かったのは「DIAM厳選米国株式ファンド(愛称:アメリカンセレクション)」の19.86%。米国株式の中から高い利益成長が期待できる企業を選んで集中投資している。7月末時点の組み入れ上位はアマゾン・ドット・コム(AMZN)とマイクロソフト(MSFT)、グーグルの親会社アルファベット(GOOG)など。年1回の7月決算で1万口あたり2200円と、前年と同額の分配金を支払った。
■4位はペット関連の「ぽちたま」
2位の「三菱UFJ NASDAQオープン Bコース」は、米ナスダック上場銘柄の中から新しい技術や製品の開発力などに着目して投資先の企業を厳選する。このファンドは組み入れ1位がマイクロソフトで、2位がアマゾン。前年の7月決算で350円だった分配金を今年は1500円に増やした。分配金健全度は1年と5年も100%だった。
年4回決算型の「LM・アメリカ高配当株ファンド(3ヵ月決算型)」が3位に入ったが、最後に分配金を出したのはコロナ前の今年2月。足元では運用が振るわず、分配を見送っている。7月末時点の1年リターン(分配金再投資ベース)は10%超のマイナスだった。4位には「東京海上・グローバルペット関連株式ファンド(為替ヘッジなし)(愛称:ぽちたま)」がランクイン。世界の株式のうちペット関連に投資するファンドで、米国への投資割合が6割以上を占める。
■毎月分配型、元本取り崩して支払い
分配金健全度を考慮せずに分配金利回りが高い順に並べてみると、上位5本はすべて毎月分配型だった。複雑な仕組みで運用益の上乗せを狙うカバードコール型や通貨選択型が多く、どれも分配金健全度やリターンが低かった。
分配金利回りが89.54%と最高だったのは、「ブラジル株式ツインαファンド(毎月分配型)ツインα・コース」。ブラジル株式とオプション取引を組み合わせたカバードコール戦略で運用する。3年の分配金健全度は15.78%で、5年はゼロ%(すべてが元本取り崩し)。元本の取り崩しを続けてきたことで基準価額が1000円を割り込み、過去1年の分配金合計を直近の基準価額で割った分配金利回りがここまで高くなった。
シニア層を中心に投信の分配金で毎月の生活費を補いたいニーズは根強いが、運用成果に見合わない高額の分配金を出すタイプは元本が目減りしていく傾向がある。元本が減ると投資から得られるリターンが上がりにくくなる。毎月分配型の投信を選ぶ場合でも、分配金利回りの高さだけに惑わされないようにしたい。
(QUICK資産運用研究所=西田玲子)