【QUICK Market Eyes 川口究、片平正二】株式市場で今後の政局の行方が株価に影響を与えるとの見方が強まっている。永田町の動向に視線が集まる中で自民党の下村博文政調会長は9月21日夜のBS番組で、衆院解散・総選挙について「自民党の国会議員のほぼ総意、即解散」と述べた。また年内の解散の可能性や、仕事の実績が出た後の来年以降もあると語った。
■リバーサルがより強まる可能性=SMBC日興
SMBC日興証券は18日付リポートで、菅首相が感染収束と経済立て直しを最優先する考えを示したことに「年内解散の可能性はやや低下したと言えるだろう」としたが、その可能性については「『五分五分』程度には念頭に置く必要があるだろう」と指摘した。年内解散の場合は、衆院選は最短で10月25日の大安の日、または第三次補正予算の編成を経た12月とみている。
自民党が議席数を減らさなかった過去の衆院選では、海外からの資金フローを中心に30日程度前から株価上昇が始まり、選挙後には加速する傾向があった。物色に関しては、ベータが高い景気敏感株、来期増益率や自己資本利益率(ROE)が高い銘柄が選好されていた。年内に衆院選が実施され、海外からの資金フローが流入する場合、大型外需のブルーチップ銘柄など、「来期業績の復調が期待され、クオリティを兼ね備えた景気敏感株が矛先になりやすいだろう」との見解を示した。
また「10月後半以降はリバーサルがより強まる可能性が否定できない」という。第一として、中間決算では4~6月期(1Q)決算よりも業績の上振れが確認できる公算が大きいとした。1Q決算後には業績底入れが確認された銘柄が集中的に選好されたが、中間決算ではそうした銘柄のユニバースが広がるとみる。例年、中間決算を終えると市場では「来期目線」に移り変わる傾向があり、その場合は必然的にリバーサル色が強まる恐れがある。第二に、最短で10月後半にはワクチンが承認される可能性が出てきている。「with コロナ関連売り&before コロナ関連買い」のトレードが強まることも否定できないという。第三に、11月3日に米国大統領選を通過すれば、ひとまずはあく抜け感が醸成されやすいとした。さらに、衆院解散のシナリオもあり得る。
■菅政権、今後3~6カ月が鍵=BofAセキュリティーズ
BofAセキュリティーズは18日付のリポートで、菅政権発足を踏まえて投資家からの質問を元にQ&A形式で菅政権の見所、今後の展望を解説した。その中では「菅政権とその政策を長期的にポジティブ視している。しかし、株式市場が経済と企業収益への持続的なプラス影響を織り込むには、政権の耐久力の証左と政治志向の明確化が必要となろう」とし、「今後3~6カ月が鍵とみている」と目先の対応に関心を寄せていた。
具体的には、「政権を持続させ、改革を実行するためには、支持率を維持する必要がある」とし、支持率の急落を回避するためには「菅氏は新型ウイルスの感染拡大が続く中で段階的な経済再開を進めつつ、有権者に響く、目に見える成果を速やかに上げる必要がある」と指摘。また優先課題としては、携帯料金引き下げや行政サービスのデジタル化などが考えられるとしながら、「これらのプロジェクトに直ちに取り組み得る堅実な内閣の組閣という点で、今のところ滑り出しは順調である」と評価した。
その一方で、解散総選挙のタイミングとしては4通りが考えられると指摘。①10月解散・11月選挙、②11月下旬解散・12月中旬選挙、③1月解散・選挙、④21年度予算成立後の晩春に解散・選挙――の4つで、「2021年10月の衆議院任期満了、2021年9月の菅氏の自民党総裁任期満了という2つの重要な期限を念頭に置いたものである」としながら、「菅氏は自民党総裁再選の前提条件として、総裁選までに解散総選挙を実施して勝利する必要がある。解散総選挙のタイミングとしては、今年末ないし来年初の可能性が最も高いように思われる」とみていた。
<金融用語>
ブルーチップとは
アメリカで優良株のことをいう。収益性、成長性にすぐれているだけでなく財務的基盤も磐石とした企業を指す。 ポーカーで最高額のチップが、青色だったからあるいは、牛の品評会で優良の査定を受けた牛が、青い布片を付けられたからなどの説がある。