【NQNニューヨーク=張間正義】今週に入ってからも「9月の株売り」が止まらない。株式と同様にリスク資産に分類される低格付け債(ハイイールド債)からの大規模な資金流出を、一段のリスクオフの予兆と身構える市場参加者もいる。2月後半に発生したような大幅な株安再来への警戒が高まっている。
23日のニューヨーク債券市場で米長期金利の指標である10年物国債利回りは前日と同じ0.67%で終えた。債券市場が想定する将来の変動率を示す「MOVE指数」は30%台後半と過去最低水準に低下。長期金利は9月に入り、終値ベースでは0.6%台の日が続いており、国債増発の需給懸念による金利上昇は鳴りを潜めている。
■炭鉱のカナリア
新型コロナウイルスの感染再拡大や11月の米大統領選挙など不確実要因が多い。米国の経済学者らが算定する「世界の政策不確実性指数」は過去最高水準で高止まりしている。同指数が上がると長期金利は低下する逆相関の関係が強いとされ、「指数の水準から0.6%台の長期金利は妥当といえる」(エバコアISIのスタン・シプレー氏)
今週に入り、投資家心理に影を落としているのがハイイールド債からの大規模な資金流出だ。QUICK・ファクトセットによると、ダウ工業株30種平均が一時900ドル超下落した21日に、米国のハイイールド債に投資する上場投資信託(ETF)の「iシェアーズ・iボックス・米ドル建てハイイールド社債」からは10億6400万ドルの資金流出が発生した。1日の流出額としては2月25日以来、ほぼ7カ月ぶりの大きさだ。
21日は同じくハイイールド債に投資する「SPDRブルームバーグ・バークレイズ・ハイ・イールド債券」や米投資適格社債を組み込む「iシェアーズiBoxxドル建て」からも資金流出が目立った。
iシェアーズ・iボックス・米ドル建てハイイールド社債には21日までの3営業日で21億ドルの資金流出が発生した。連日の資金流出との点でも2月後半と相似している。2月後半以降、その後は1カ月にわたり、新型コロナによる世界的な株安が発生した。ハイイールド債の動向が相場の不吉な兆候を示す「炭鉱のカナリア」と呼ばれるゆえんだ。
※米ハイイールド債ETFの価格はじり安基調に
バンク・オブ・アメリカが算出するハイイールド債と米国債のスプレッドは9月に入り43ベーシス(0.43%)も広がり、「相場の流れ的には一段と拡大するとみている」(米国債トレーダー)との声もある。
■それともリバランスか
もっとも、数日間のハイイールド債の資金動向だけで、一段のリスクオフを予想することは危険だ。期末を控えた機関投資家による、資産リバランス(入れ替え)の一時的な需給要因の可能性もある。
2020年7~9月期は歴史的な株高になる見込みで、反動の株売りも大規模なものになりそう。7~9月期は高リスク資産ほど大きく上昇したため、ハイイールド債も株式同様、期末のリバランスで売り対象となる可能性が高い。期末リバランスは1週間後の30日にかけヤマ場を迎える。相場観を持たない機械的な動きが主導するリスクオフであれば、10月以降はその動きは和らぐことになる。