【QUICK Market Eyes 大野 弘貴、片平 正二、阿部 哲太郎、本吉 亮、川口 究】9日の米株式市場でダウ工業株30種平均が834ドル高と急伸した。製薬大手ファイザーが開発を進める新型コロナウイルス向けワクチンの有効性が非常に高い結果となったことが判明。経済の正常化への期待感からこれまで売られていた銘柄に買いが殺到した反面、「在宅」で恩恵を受ける銘柄には売りが膨らんだ。
■AMCが51%高―ファイザーのワクチンでコロナ収束への期待感
9日の米国市場で映画チェーン大手のAMCエンターテイメント(AMC)が暴騰。前週末比51%高の3.77ドルで取引を終えた。
米製薬大手ファイザー(PFE)は9日、開発中の新型コロナウイルスワクチンについて、治験で予防の有効性が90%超とした初期データを発表した。これを受けて、コロナ収束への期待感から幅広い銘柄に買いが入った。映画館チェーンは、新型コロナ感染拡大抑制のためのロックダウン(都市封鎖)を受けて閉鎖を余儀なくされ、収益が大きく落ち込んでいただけにコロナ収束による恩恵は大きいとみられる。
AMCは9月末時点で4億1800万ドルの現金を保有しているが、追加で流動性を確保できなければ、年末または2021年初頭までに使い果たし、米連邦破産法11条の適用を申請する可能性があると警告していた。
■クルーズ船のカーニバルが39%高―米S&P500指数採用銘柄の値上がり率1位に
9日の米国株式市場でクルーズ船大手のカーニバル(CCL)が急騰。通常取引の終値は前日比39.29%高の19.25ドルだった。米S&P500株価指数採用銘柄では、値上がり率トップとなった。
この日、米製薬大手のファイザー(PFE)が開発中の新型コロナウイルスのワクチンに対して、臨床試験で高い有効性が示されたと発表。経済活動再開への期待が大きく上昇し、景気敏感株全般が買われる展開となった。直近では、欧米での新型コロナウイルスの再拡大の懸念や、米追加経済対策への合意期待の後退もありレジャー関連が売られていたこともあり大幅高となった。
同業のロイヤル・カリビアン・クルーズ(RCL)は28.78%高、ノルウェジアンクルーズ(NCLH)は26.75%高と同じく急騰した。
■ファイザーが1年3カ月ぶり高値―新型コロナワクチンで9割以上の参加者に効果
9日の米国市場でファイザー(PFE)が大幅続伸し、7.69%高の39.20ドルで終えた。一時は41.99ドルまで上昇して2019年7月29日以来、1年3カ月ぶりの高値水準を回復した。
この日、独ビオンテックと共同開発中の新型コロナウイルス(COVID-19)のワクチンに関して、治験に参加した人の9割以上で予防の効果が生じたと明らかにしたことで好感する買いが殺到した。ファイザーのワクチン開発の動向は11月中に発表される予定だったが、10月27日の20年7~9月期(3Q)決算発表時に米食品医薬品局(FDA)への緊急使用許可申請に向けた有効性・安全性が示されなかった経緯があり、やや意外感のあるタイミングでの発表だった。
JPモルガンは9日付のリポートで「ファイザーとビオンテックが90%を超える対象者で有効性を示したと発表したが、ワクチンに新たな安全上の問題は発生しておらず、緊急使用許可申請を裏付けるデータは来週発表される見通しだ」としながら、「既にワクチンの市販前にファイザー株が15%ほど上昇したことを考えれば、推定で100億~200億ドルとみられるワクチンの価値が反映されているとみられ、ワクチンの最良シナリオを株価は反映していると考える」と指摘した。最良の結果が得られるとしてもファイザー株に妙味は乏しいとし、投資判断の中立(ニュートラル)、目標株価36ドルを維持していた。
■ノードストロームが25.8%高―ワクチン報道受け急騰、投資判断引き上げも材料視
9日の米株式市場で百貨店のノードストローム(JWN)が急騰し、25.85%高の16.16ドルと3日続伸して終えた。米製薬大手のファイザーが同日、開発中の新型コロナウイルスのワクチンの治験で予防の有効性が90%を超えたとする初期データを発表した。ワクチン普及に伴う経済活動の正常化期待が高まり、新型コロナ禍で大幅に業績が悪化していた銘柄が軒並み大幅に買い戻される展開となった。
また、ノードストロームに対しては9日、テルシー・アドバイザリー・グループが投資判断を「マーケットパフォーム(中立)」から「アウトパフォーム」に引き上げたことも材料視された。テルシーはノードストロームの差別化されたビジネスモデルが、強力な財務状況に支えられながら、収益性の高い市場シェアを獲得するための魅力的なポジションにあると指摘。同業他社に比べて低迷している株価も「魅力的なエントリーポイントとバリュエーションである」との見方を示した。
■ペロトンが20%超下落―米系証券のTP引き上げにも、巣籠銘柄が軟調
9日の米国株式市場で在宅フィットネスのペロトン・インタラクティブ(PTON)が大幅に続落した。日中取引の終値は前日比20.28%安の100.01ドルだった。同日にファイザーが独ビオンテックと共同開発する新型コロナウイルスのワクチンに関して、臨床試験で高い有効性を示したと発表し、経済正常化が進むとの見方から景気敏感株を中心に買いが膨らんだ。米系証券による目標株価(TP)の引き上げも、巣籠り関連銘柄の一部ともみられる同社株の買い材料にはならなかった。
バーン・スタイン・リサーチは9日付リポートで、同社の目標株価を120ドルから160ドルに引き上げた。5日に発表された2020年7~9月期決算を受けて、広告とコネクティッド・フィットネスの売上高の増加が21年や22年も見込めるとして業績見通しを引き上げた。9月に発表した新製品の「バイク+(プラス)」なども一部成長に寄与するとみている。担当アナリストは「20年の急速な成長は、パンデミックによって促進されたと思われるが、この需要が一時的なものであるとは考えておらず、さらなる浸透に向け、長い道のりが続くと思われる。同社は2020年12月に年間約150万台の生産能力を追加する予定で、これにより21年の懸念が緩和され、次の暦年にも販売は堅調に推移すると予想される。これは、(これまで)低価格のルームランナーの製品拡張(高価格帯モデル)によってもサポートされるはずであり、長期的には同社の(エアロ)バイクよりも多くのユニットが売れるだろう」と指摘した。