2020年4~9月期決算で注目点の1つは売上高や利益が通期予想に比べてどの程度達成したかを示す進捗率だ。新型コロナウイルスの影響で分析が難しいが、もともと均等なペースで推移する会社ばかりではない。書き入れ時にばらつきがある「季節偏重」事業とその要因を「QUICKリサーチネット」を使って調べた。
■上期が書き入れ時の「先行型」は
飲料メーカーからの委託を受けて清涼飲料などを生産するジャパンフーズ(2599)の2020年4~9月期(上期)決算は売上高が76億8800万円、営業利益は6億4900万円だった。下方修正後の21年3月期通期予想に対する上期の進捗率は売上高が54.9%で、営業利益は6490%になった。
※ジャパンフーズの売上高と営業利益の推移
2020年3月期の上期末時点の進捗率(通期実績比)は売上高が57.8%、営業利益は224.3%。新型コロナウイルスの影響がなかった19年3月期の上期末時点の進捗率(同)は売上高が55.3%、営業利益は160.8%で、上期に業績が偏る「先行型」といえる。
「QUICKリサーチネット」で提供されるQUICK企業価値研究所の個別銘柄レポートの「沿革と事業内容」は、このような特性も取り上げている。ジャパンフーズは「炭酸飲料が夏場に集中して消費されるため、売上高や利益は4~9月期に偏重する傾向が顕著」とある。出典は有価証券報告書などの公開情報だ。
■下期に追い上げる「出遅れ型」は
「QUICKリサーチネット」のフリーワード検索で「偏重」「集中」「傾向」などと入力して調べると、複数の会社がヒットした。「顧客企業の年末調整業務の影響により下半期(10月~翌年3月)に売上高が偏重する傾向」があるのは、給与計算のアウトソーシングを手掛けるエコミック(3802)だ。
エコミックの2020年4~9月期決算は売上高が4億6900万円で、会社の通期予想に対する進捗率32.0%にとどまった。4~9月期の営業損益は4400万円の赤字だったが、通期は1億4600万円の黒字予想だ。
※エコミックの売上高と営業利益の推移
2020年3月期、19年3月期ともに通期の営業損益は黒字だが、上期にはともに赤字だった。売上高の上期末時点の進捗率(通期実績比)を見ると、20年3月期が32.7%、19年3月期は35.9%であり、下期に巻き返す「出遅れ型」といえる。
■鍋物の具材や入学・入社、婚礼シーズン
「沿革と事業内容」は全銘柄の業績進捗の特性を網羅しているわけではないが、「QUICKリサーチネット」でヒットした季節偏重の要因を抜き出してみた。消費者になじみのある商品やサービスでは、鍋物の具材のほか、入学や入社、婚礼関連などがある。
▽ホクト(1379)
「きのこの需要期は秋・冬のため、例年3Qに売上高・利益が偏重する傾向」
▽あさひ(3333)
「入学・入社シーズンの春が最需要期となるため、売上高が上期に偏り、固定費が一定であるため営業利益も上期に偏重する傾向」
▽クラウディアホールディングス(3607)
「9~11月の第1四半期と3~5月の第3四半期の婚礼シーズンに売上高が偏重する傾向」
■納期や売上計上が期末に集中
法人取引では、大学入試の運用受託のほか、納期や顧客の検収時期が年末や年度末など特定の時期に集まる。
▽コムシスホールディングス(1721)
「電気設備工事の売り上げが集中する4Qに業績が偏重する傾向」
▽シップヘルスケアホールディングス(3360)
「利益の柱であるTPP事業において、主要顧客である医療機関等の予算執行の関係上1月から3月に売上計上が集中する傾向があるため、同社の業績も4Qに集中する傾向」
(注)TPP=トータルパックプロデュース
▽ファインデックス(3649)
「導入先の医療機関はシステムの稼働開始日を1月1日に設定するケースが多く、検収時期が12月に集中するため、同社の収益も12月に集中する傾向」
▽ODKソリューションズ(3839)
「大学入試の運用受託をはじめとした売上高と利益は第4四半期(1~3月)に急増するなど業績が下期に偏重する特性」
▽パシフィックシステム(3847)
「売上高が顧客の検収時期にあたる期末の3月に集中する傾向」
▽ニチレキ(5011)
「公共工事を主体としているため、業績は年度末に向けた下期に偏重する傾向」
こうした特性を持つ会社は1年を通して業績を見ていく必要がある。また季節の偏りをならすための多角化の動向も注目される。(QUICKリサーチ本部 遠藤大義)