【NQN香港 川上宗馬】中国スマートフォンの小米(@1810/HK)が24日夜に発表した2020年7~9月期決算は、米制裁を受けて苦戦する中国の華為技術(ファーウェイ)からシェアを奪い、好業績を示した。ただ、スマホ市場での快走とは裏腹に、好材料出尽くしとばかりに25日の香港市場で小米株はさえない値動きとなっている。市場シェアの拡大期待で先回り買いが続いていた反動に加え、今秋以降の新型コロナウイルスの世界的な感染再拡大で、製造・供給面でのリスクが浮上してきたことが背景にある。
■ファーウェイに取って代わる
7~9月期決算は純利益が前年同期比93%増の48億元、売上高は35%増の721億元だった。QUICK・ファクトセットがまとめた市場予想(売上高が672億元、純利益が30億元)をともに上回った。主力のスマホ事業の売上高が48%増の476億元となり、全体をけん引した。
米調査会社カナリスによると、中国国内のシェアを前年同期の9%から12.6%に伸ばしたほか、西欧では初めてトップ3に入った。ファーウェイの出荷が欧州で25%減少した一方で、小米は88%増加。スマホに組み込む半導体の調達などで苦しむファーウェイに代わって消費者を取り込んだ。インドでは国境紛争による中印関係の悪化でボイコット運動が一部でみられたが、シェアトップの座を維持した。
そのファーウェイは11月中旬、低価格帯ブランドの「HONOR(オナー)」を、深セン市政府の傘下企業などが設立した新会社に売却すると発表した。低価格でデザイン性に優れたスマホで強みを持つ小米だが、中国の競合であるOPPO(オッポ)やvivo(ビボ)を含め、今後は新興国の市場開拓で競争が一段と激化するとみられる。小米の王翔総裁は24日夜に開いたオンライン決算会見で「中国だけでなく、多くの国や市場で拡大戦略をとっており、正しい戦略だと信じている」と同社の方針を説明し、攻勢を続ける考えを示した。
■むしろ供給懸念
ただ小米株は25日の香港市場で一時、前日比5.3%安まで下落した。24日に28.4香港ドルと上場来高値を更新しており、「競合他社からシェアを奪うことへの期待はすでに株価に織り込まれた」(大和キャピタル・マーケッツ香港)との見方から材料出尽くしの売りが出た。
世界的なコロナの感染再拡大も事業の先行きに影を落とす。スマホ市場は次世代通信規格「5G」の需要などが見込まれるが、出荷しようにも10~12月期はインドなどで部品供給が滞るリスクが浮上している。王総裁は会見で「短期的には供給不足が課題となりそうだ」と繰り返し述べた。株式市場はスマホ事業の伸びが鈍化すると嗅ぎ取った可能性がある。
小米はゲームやフィンテックなどのインターネットサービス事業を将来の成長分野と位置付けるが、7~9月期の売り上げは9%増と、4~6月期(29%増)から伸びが鈍化した。ネット分野を巡っては、中国当局がアリババ集団をはじめ巨大企業への規制強化を進めようとしている。こうした懸念を払拭する新たな材料が出てくるまで、小米株は上値の重い展開が続きそうだ。