【日経QUICKニュース(NQN) 菊池亜矢】12月9日の東京株式市場でスズキ(7269)株がさえない。トヨタ自動車(7203)や日産自動車(7201)、ホンダ(7267)が上昇するなか、スズキ株は一時前日比1.8%安の5245円まで売られた。自動車の電動化の動きが勢いを増しており、研究開発費を投じやすい大手メーカーに有利と見られている。もっとも、スズキは主力のインド市場の回復が支え。株価が下落基調に転じたとの見方は少ない。
■EV関連銘柄の物色の圏外?
東京都は8日、都内で販売されるすべての新車をハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)などの電動車に切り替える方針を示した。30年までに都内でのガソリン車の販売をゼロにする目標を掲げる。二輪車は35年までにゼロとする。世界中で脱ガソリン車の動きが広がるなか、ハイブリッド技術を持つ大手自動車メーカーの株に追い風。電気自動車(EV)の車種を持たないスズキは「EV関連銘柄の物色の圏外」(国内証券の投資情報担当者)だ。
ただ、スズキは電動バイクや電動スクーターなどでは先行している。「トヨタとの連携もある」(国内証券のセクターアナリスト)。11月18日には「スズキ環境ビジョン2050」を発表し、2030年までに新車四輪車が排出する二酸化炭素(CO2)を10年度比40%減、2050年までに10年度比90%減を目指す方針を打ち出した。小さい車の環境優位性を発揮しながら全ての乗用車が向かうべき2050年のCO2水準を目指すという。
■「一服感が出てきてもまったくおかしくない」
国内自動車メーカーのなかでも新興国のイメージが強いスズキ。新型コロナウイルスの影響で2020年4~6月期の売り上げは大きく落ち込んだが、7~9月期には前年同期とほぼ同水準まで改善した。インド市場などの回復を急速に織り込んで、4月から11月までの株価上昇率は2.2倍になった。この間のトヨタ(7.7%)や、日産自(38%)、ホンダ(18%)の上昇率をしのいだ。
スズキは11月25日に年初来高値の5816円を付けたが、その後は株高に一服感が出ている。市場からは「スズキの上昇が断トツだったので、ここにきて一服感が出てきたとしてもまったくおかしくない」(ネット証券のアナリスト)との声がもっぱらだ。
三菱UFJ国際投信の石金淳チーフファンドマネジャーは「電動化は世界的な国策となっており、この流れが止まることはない」と指摘する。CO2排出量の多い国は、中国、米国に次いでインドは3位。裏返せば潜在的なCO2排出削減への取り組み効果が大きいということだ。電動化の流れを見据えつつ、インド市場に強みを持つスズキ株への前向きな見方は崩れていないようだ。
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