【QUICK Money World 】来週(1月11日~)の上場REIT(不動産投資信託)市場を展望するために、QUICKが今週配信したREIT関連ニュースを振り返った。東証REIT指数自体に方向感は乏しかったものの、アナリストからは今年の相場に対し強気の声が出ている。来週はAPI(3279)とユナイテッドU(8960)が決算を発表する予定だ。
今週の主要REIT指標の騰落率は以下となる。REIT相場全体は横ばい。セクター別に見ると、物流、商業は堅調な一方、オフィスが軟調だった。
銘柄名 | 騰落率(%) |
東証REIT指数 | 0.00 |
東証REITオフィス | -1.21 |
東証REIT住宅 | -0.02 |
東証REIT商業 | 1.19 |
東証REIT物流フォーカス | 2.56 |
■日銀はJ-REITの買入をREIT-ETFを通じた買入に切り替える可能性=野村証券(12/29)
日銀が28日、17~18日に開催した金融政策決定会合で出席委員から出された「主な意見」を公表した。市場では「点検」する方針が示されたことで上場投資信託(ETF)の買入に関して変更があるのではないかと警戒されている。
野村証券は28日付のリポートで「日銀は『主な意見』の中でJ-REITには直接言及していないが、基本的には同じリスク性資産としてETFに似た扱いになると考えられる」と指摘した。リポートでは、「日銀がこれから金融緩和の更なる長期化を見越して諸施策の持続性を点検するとなれば、J-REITの買入れに係るルールや方法に変更が加えられる可能性はそれなりに高い。日銀は現状、買入対象としているJ-REITの銘柄毎の保有比率上限を各銘柄の発行済投資口の10%と定めている。それに対してこれまでに提出された大量保有報告書から、既にJ-REIT6銘柄について日銀の保有比率が上限の10%に近い9%台に達していることが明らかになっている」としながら、「日銀がJ-REITの買入政策の持続性を考慮するならば、21年3月を目処にJ-REITの銘柄毎の保有比率上限を10%から引き上げるか、あるいは銘柄毎の保有比率を気にせずに済むREIT-ETFを通じた買入れに切り替える可能性があると考えられる」と指摘。J-REITの買入額の目安を現行の年間約900億円、上限約1800億円から減額する可能性は低いと考えられるとしつつ、レンジで示す直す可能性があるとも指摘した。(QUICK Market Eyes 片平正二)
■J-REIT市場に上昇余地あり=野村証(12/30)
野村証券は29日付のJ-REIT(日本の上場不動産投資信託)リポートで、2020年の東証REIT指数は年初来で18%安(29日終値)と東証株価指数(TOPIX)の同7%高を大幅にアンダーパフォームしていると指摘。J-REIT市場の低迷は毎月分配型投信の資金フローが悪化した17~18年以来になったと振り返った。
新型コロナウイルスの感染拡大に揺れた20年は、J-REITにおいても株式市場同様、「新型コロナ禍でも淡々と成長を続けられるビジネスモデルを持つセクターや企業が評価されてきた。そして一時期からは新型コロナ禍での業績急失速からの急回復への期待も評価軸の一つとなっている」と指摘。「不動産賃貸事業に特化しているJ-REITは、どうしてもそれらの観点からは評価されにくい」との見方も示されている。
それでも、株式と同じ上場エクイティにあたるJ-REIT相場が「株式市場に対してここまで出遅れている事には違和感がある」とし、東証REIT指数のターゲットを1850(21年1月末目安)で据え置いた。「今後、金融市場が新型コロナ後を見据える形で本格的なリスクオンに傾く展開となれば、景気敏感でバリュエーションも相対的に低位な商業REITやオフィスREIT、複合型・総合型REITがまず買われる可能性がある」と予想。
また、ディフェンシブな物流REITと住宅REITは「リスクオンの中では相対的に注目度が低下する可能性」があるいものの、「他のサブセクターのバリュエーションが上昇し評価格差が縮小すれば、ファンダメンタルズの相対的な良さから再び評価が高まると考えられる」との見方も示されている。(QUICK Market Eyes 大野弘貴)
■2020年のデリバティブ取引高が4億5424万3153単位で過去最高(1/4)
2020年のデリバティブ市場(大阪取引所+東京商品取引所)の年間合計取引高が4億5424万3153単位(速報値)となり、2018年(4億1187万7601単位)を上回って年間として過去最高を記録した。OSEによれば、主要商品では日経225mini、TOPIX先物、プラッツドバイ原油先物が過去最高を更新したほか、ミニTOPIX先物、東証REIT指数先物、NYダウ先物、東証マザーズ指数先物でも過去最高を更新したという。
その一方、ナイト・セッション取引高は1億8348万2613単位となり、全体の取引高に占めるナイト・セッションのシェアは41.8%となってこちらも過去最高を記録。コロナ禍を背景としてリスクヘッジニーズが高まったほか、欧米市場の変動が大きかったことからナイト・セッションも多かったとみられる。9月21日に次期デリバティブ売買システム「J-GATE3.0」の本番稼動が予定されていることから、ナイトセッション比率は益々高まりそうだ。(QUICK Market Eyes 片平正二)
■東証REIT指数の21年末の目標水準は1900ポイント=大和証(1/4)
大和証券は4日付のJ-REITセクターリポートで、東証REIT指数(155)の2021年末の目標水準を1900ポイントと指摘した。同社の想定加重平均分配金利回りで3.8%相当といい、「短期的には利益確定売りに押される可能性もあろうが、昨年より着実にバリュエーション修正をこなしてきたことを踏まえれば、下方リスクは限定的と考える」と指摘。「同指数の日中ボラティリティが低位になることで18年相場と同様のジリ高の展開を見込む」とも指摘した。
その一方で、サブセクター選好順位としては「エクイティ投資家には『総合・複合>商業>物流(インダストリアル含む)>オフィス>住宅>ホテル』の順、クレジット投資家には『総合・複合>物流(インダストリアル含む)>住宅>オフィス>商業>ホテル』の順としたい」とも指摘した。(QUICK Market Eyes 片平正二)
■日銀がJ-REITの買入を減額、事実上のテーパリングとみなされる可能性=モルガン・スタンレー(1/5)
日銀が4日に上場不動産投資信託(J-REIT)を9億円買い入れた。従来の12億円から25%減額されたことになる。この日は上場投資信託(ETF)の買入額も701→501億円(28.53%)減額されていた。
モルガン・スタンレーMUFG証券は4日付のリポートで、J-REITの買入減額について「事実上のテーパリングと看做される可能性もあり印象はやや悪い」と指摘した。リポートでは、日銀は株価が大きく調整した2020年3月に1日あたりの買い入れ額を40億円に引き上げたものの、その後これを徐々に減額し、同年8月以降は12億円としてきたとしながら、「同行は2014年10月末の金融緩和拡大からは、最低でも1日あたり12億円のJ-REITの買い入れを維持してきたことから、1日あたりの需給インパクトの観点ではそれ以前の水準に戻ることになる」と指摘。背景として、「近時においてJ-REITの株価が堅調に推移してきたことを一因と看做すこともできるものの、極力抑制的なペースで買い入れを行いたい同行の意向が顕れたものと看做すこともでき、ややネガティブに受け止められる可能性があろう」とし、市場に与えるメッセージ性を警戒していた。
一方、野村証券は4日付のリポートで「日銀は既にJ-REIT市場の時価総額の約5%を保有しており、銘柄によっては保有比率が上限の10%に既に近く、基本的にJ-REITの買入れには消極的と考えられる」と指摘。日銀が3月の金融政策決定会合をめどに金融緩和策の点検結果を公表する予定となっていることを踏まえ、「コロナ禍でJ-REITの年間買入額を現行の基本約900億円、上限約1800億円から明示的に減額する可能性は低いと考えられるが、新たに下限を設定して上限とのレンジで示し直す形への変更などはあり得よう」とし、柔軟性を持たせる可能性を予想した。(QUICK Market Eyes 片平正二)
■シーアールイー(3458)― 小幅続伸 系列の物流REITに物流施設を売却(1/5)
物流施設の開発から運用、管理を手掛けるシーアールイー(3458)が小幅続伸。4日、保有する物流施設3物件を系列のCREロジスティクスファンド投資法人(3487)に売却すると発表し、下支えとなっているもよう。
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(08:35)シーアールイー(3458)―夜間PTSで2%高 系列の物流REITに物流施設を売却
物流施設の開発から運用、管理を手掛けるシーアールイー(3458)は4日、保有する物流施設3物件を系列のCREロジスティクスファンド投資法人(3487)に売却すると発表した。
売却するのは、「ロジスクエア川越Ⅱ」「ロジスクエア神戸西」「ロジスクエア狭山日高」となり、売却総額はおよそ200億円弱となる。
本件による業績への寄与は2020年9月発表の21年7月期業績予想に織り込んでいる。
夜間PTSでCRE(3458/JNX)は買われ、日中取引の終値比2%高の1268円で取引を終えた。(QUICK Market Eyes 阿部哲太郎)
■J-REIT、緊急事態宣言よりも2月下旬の新型コロナワクチン接種開始を見据えた動きか=野村(1/6)
東証RETI指数は5日、前日比1.1%上昇した。政府が緊急事態宣言を再発令する公算が大きくなった前日には同指数は1.5%下落していた。
野村証券は5日付リポートで、緊急事態宣言の実効性に対する懐疑的な見方で金融市場が落ち着いた動きとなった可能性があると指摘した。政府は1月7日に東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県を対象に緊急事態宣言を発令する方針で、期間は1カ月程度と見られ、20年4月7日に発令され5月25日に解除された前回の緊急事態宣言の時とは異なり、今回は百貨店や映画館、劇場、学校などは対象外になるとみられる。前回よりも制約が緩められた内容の今回の緊急事態宣言はさほど実効性の高いものにならないとの見方が金融市場の落ち着きに影響した可能性があるとみている。
同時に政府は新型コロナのワクチン接種を2月下旬までに開始できる様準備していることを明らかにしている。J-REIT相場を含む金融市場は今回の緊急事態宣言がもたらし得る経済的な悪影響というより、ワクチン普及後の経済活動正常化を見据えた動きになっているとも考えられるという。
ただし「Go To」キャンペーンの一時停止や入国制限強化の可能性、時短要請などが「ホテルや商業施設へ与える影響に注意したい」と指摘した。同証券では景気敏感なサブセクターへも一層目配りしつつ、現状サブセクターの投資優先順位はファンダメンタルズに重きを置いて物流施設、住宅、複合型・総合型、中小規模オフィス、商業施設、大型オフィス、ホテルの順としている。(QUICK Market Eyes 川口究)
■サムティ(3244)― 一時2%安 21年11月期営業益3~5割減見込む(1/6)
総合不動産業のサムティ(3244)が安い。後場に一時2%安の1705円を付けた。前引け後に2021年11月期の連結営業利益が前期比3割減~5割減になりそうだと発表し、嫌気されている。
21年11月期は売上高が前期比24%減~8%減の766億円~922億円、営業利益が同53%減~32%減の81億円~118億円を見込む。
新型コロナウイルスの影響が21年秋ごろまで影響するとの前提の想定となる。
同時に発表した20年11月期は、売上高が前期比18%増の1011億円、営業利益が同13%増の173億円だった。
賃貸マンションは、景気動向や新型コロナウイルス感染症の影響を受けにくく堅調に推移した。当初はホテルREIT(不動産投資信託)の設立を予定していたが、感染拡大でホテルの売却時期など翌期以降へ見直した。(QUICK Market Eyes 阿部哲太郎)
■「REITの勝ち筋が見えない」(1/6)
「後場寄り後まで前日比1%超高で推移していた東証REIT指数ですが、この時間帯にマイナス圏に沈んでしまいました。米10年債利回りが1%乗せ、新型コロナの東京都での新規感染者数が1591人と報じられました。米金利が上昇すれば、相対的な利回り面での魅力が薄れ、コロナが拡大すればオフィス需要が減る。今のところ、REITの勝ち筋が見えません」(国内運用機関)(QUICK Market Eyes 大野弘貴)
■J-REIT、コロナ後を見据えて前向きな姿勢で投資する動きも=野村(1/7)
6日のJ-REIT相場は荒い動きとなった。東証REIT指数はこの日の高値では1801.18ポイントまで上昇し、2020年3月12日以来、およそ10カ月ぶりに1800ポイント台に到達した。14時以降は売りが先行して、結果的には前日比1.41%安の1750.45ポイントで引けた。
野村証券は6日付リポートで、こうした展開に対して「午後の取引時間中に東京都内の1日当たり新型コロナ新規感染者数が過去最多を更新と伝わったことが影響した可能性もある。また東証REIT指数1800ポイントへの到達を機に利益確定した市場参加者が存在した可能性もある。12月以降の相場上昇を踏まえ、一旦売却する機会を窺う向きが増えていたことは考えられる」と指摘した。
6日はJ-REIT62社のうち株価上昇は6社と限られたが、そのうち2社はホテルREITだったという。そうした点から「コロナ後を見据えてJ-REITに前向きな姿勢で投資する動きもある」との見解を示した。
同証券では、日本株相場に対するこれまでの顕著な出遅れを考えてJ-REIT相場には上昇余地があると見ている。(QUICK Market Eyes 川口究)
■フロンティアRE(8964)― 急反発 大手証券が「オーバーウエート」に格上げ、店舗売り上げが回復(1/7)
フロンティア不動産投資法人(8964)が急反発。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券がフロンティア不動産投資法人(8964)の投資判断を「ニュートラル」から「オーバーウエート」に、目標株価を36万2000円から50万円にそれぞれ引き上げたようだ。商業系J-REIT各銘柄のヒストリカルボラティリティが低下していることや、店舗売り上げの底入れ感から株価が上昇する余地が拡大したと考えている。賃料の底堅さに期待しているとした。(QUICK Market Eyes 山口正仁)
■いちごオフ(8975)― 自己投資口取得を発表 発行済みの1.96%(1/8)
いちごオフィスリート投資法人(8975)は7日、REIT(不動産投資信託)の自社株買いに相当する自己投資口取得を発表した。発行済みの1.96%に相当する3万口、15億円を上限に取得し、消却する。取得期間は8日から3月31日まで。取得した投資口は2021年4月期中にすべて消却する。新型コロナウイルス感染症の影響で投資口価格が低迷しており、NAV(純資産)倍率は1倍を割り込んでいる。投資口の取得・消却で1口当たり価値の向上につなげる。
同日、いちご投資顧問は投資口取得のため運用ガイドラインを変更している。(QUICK Market Eyes 弓ちあき)
■J-REIT、2度目の緊急事態宣言、商業・ホテルに再度逆風も=野村証(1/08)
菅義偉首相は7日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、首都圏1都3県に緊急事態宣言を発令した。期間は8日から2月7日までの1カ月間。20時以降の外出自粛と飲食店の営業自粛、テレワークを推進し出勤を7割削減するなどの要請が示された。
野村証券は7日付のJ-REIT(日本の上場不動産投資信託)リポートで、緊急事態宣言によりJ-REITセクターに与える影響を分析した。
商業REITについては、前回2020年4月に発出した緊急事態宣言時に一時休業を決めた商業施設や独立店舗も多くあったことから、「自治体からの要請や自らの判断で一時休業する商業テナントがどれだけ出てくるかが、商業REIT各社の賃料減免リスクを考える上では焦点になる」と指摘。また、「一時休業の事態とはならなくても、時短営業や人々の外食自粛の影響を受ける飲食テナントの退去や賃料負担力の低下には当然注意が必要」との見方も示された。
ホテル市場については、GoToトラベルが一時停止されている中で、「緊急事態宣言で不要不急の外出は控えるべきとの風潮が強まり、旅行をしても現地で20時以降外食を楽しめないとなれば、旅行需要は減少し得る」と指摘。また、企業が再度出張を控えることでビジネス需要も減少すると見込んだ。
こうした状況下で、「ホテルオペレーターの経営が苦境に陥り、ホテルREITに対して改めて賃料減額を要請する事態には注意が必要」との見方が示された。
ただ、その他サブセクターについては、商業、ホテル型に比べれば影響は限定的との見方も示した。
2度目の緊急事態宣言発出を受け、リモートワーク体制の整備に動く企業が増えることで、オフィス賃借需要減少への警戒が強まる可能性や、都心から郊外部への賃貸住宅需要シフトが改めて連想される可能性があるものの、「各社の実際の経営に即影響が表れるものではない」と指摘している。(QUICK Market Eyes 大野弘貴)
■REIT決算&開示情報
1/5 <決算>ザイマックス (3488) 増額修正 分配金(2,822円←2,688円 2021/02)
1/8 <決算>JHR (8985) 増額修正 分配金(390円←199円 2020/12)