【QUICK Market Eyes 弓ちあき】市場の予想を上回るペースで株高が進んでいる。1月の月次調査<株式>によると、2021年の日経平均株価の最高値予想(最頻値)は3万円。すでに日経平均は2万8000円台に乗せており、上昇の勢いを見れば遠い目標ではない印象だ。
■想定以上に投資家心理は強気
株高傾向でまだ買い遅れている投資家も残るもよう。当面のスタンスを問う質問では「やや引き上げる」が18%と、「現状を維持する」(76%)に次いで多い。一方で「やや引き下げる」の回答は6%にとどまっている。
富裕層への増税リスクが高まることから、株式市場にはマイナスと見られていた米上下両院で民主党が多数派を占める「ブルーウエーブ」になったものの、日米で株価は上昇。むしろ大規模な経済政策実現への期待にすり替わる格好で株高を後押ししているとこからも想定以上に投資家心理は強気だ。
■日本株投資のリスク要因
とはいえ不安要素がないわけではない。株高も前提にはワクチンが効果を発揮し、新型コロナウイルス感染症が終息し、世界が日常生活を取り戻す中で経済活動が順調に回復するという前提がある。実際、月次調査で質問した株式市場のリスク要因では「新型コロナ感染再拡大、ワクチン開発・普及の遅延」が51%と最も多数を占めた。
ワクチンによる新型コロナの抑え込みが年内には実現するとの前提は今のところ崩れていないが、足元の感染状況はむしろ悪化の一途をたどっている感があることは気がかりだ。新型コロナ以外にも不安要素もある。次いで多かった「米国のインフレ懸念と長期金利上昇」(49%)だ。米長期金利は節目の1%を上回った。物色動向では金融セクターの「オーバーウエート」回答が13%と、12月から8ポイント上昇している。一方で「建設・不動産」は3%と、12月から9ポイント低下し、金利動向の影響を受けやすいセクターで投資スタンスにはやや差が出た。
米国債の金利が上昇して投資妙味が増せば、保険各社などは安定した金利収入が確保できるとして株から債券へ資金をシフトする動きが出たり、テーパリング(量的緩和の縮小)観測に神経をすり減らす局面が増えたりすることも予想される。
■市場の目線は来期の収益動向に
指数の上値追いには不安を残す中、出遅れ銘柄への継続的な資金流入の動きが進んでいることに着目したい。金利上昇は現在のキャッシュフロー創出力が相対的に低いグロース株優位から、バリュー株優位を後押しする要素にもなり得る。QUICK特設サイトの「トレンド」分析ツールによると、TOPIX(東証株価指数)500銘柄のうち、6日以上連続で上昇している銘柄(変わらずを含む)は13日時点で38銘柄あった。そのうち新型コロナによる急落前の昨年来高値を超えていない銘柄は25銘柄と、全体の6割強を占めた。
銘柄群には原油関連の上昇を受けて石油元売りや鉱業株が入るほか、化学大手などPBR(純資産倍率)1倍割れの銘柄群が並ぶ。発表を終えた2月期決算の小売企業では巣ごもり消費の恩恵が出た銘柄に利益確定売りが進む動きも目立っており、市場の目線は来期の収益動向に向かっている印象だ。連騰銘柄には来期「V字回復」予想の銘柄も多く、水準訂正の動きを後押ししているようだ。
<金融用語>
QUICK月次調査とは
QUICK月次調査とは、株式会社QUICKが株式、債券、外国為替(外為)の部門別に月次で行う市場動向調査のこと。 調査方式は、各部門の相場予測など同じ項目を毎月調査する「定型質問方式」と今話題の項目を調査する「スポット質問方式」を組み合わせたもので、毎月各市場関係者へアンケートを行い、調査結果をQUICKと日本経済新聞社で公表している。各部門の調査結果から「強気」、「弱気」といった市場のセンチメントと旬のテーマが分かる点が特徴。1994年4月に株式部門で調査を開始し、現在では債券、外為部門と合わせた3部門で調査(英語版の調査結果も公表)を行っている。